北海道が世界から注目を浴びる存在に変わりつつある。
観光地は訪日客で活気づく。次世代半導体の量産を目指すラピダスの進出に伴い千歳市周辺では関連産業の集積が進む。
プロスポーツも地域を活性化させている。特に北海道日本ハムファイターズが本拠地とする北広島市のエスコンフィールド北海道はにぎわいが絶えない。
石炭産業や北洋漁業などの基幹産業が衰退した後、公共事業に依存せざるを得なかった20世紀からは様変わりした光景だ。
ただ、こうした活況は住民の幸福感につながっているか。持続可能なまちになっているか。改めて問う視点も必要だろう。
■観光の果実を住民に
ニセコ地域は今や国際的なリゾートとなった。
後志管内倶知安町の2024年度の訪日客延べ宿泊数は過去最多の63万人に上った。冬季はリゾートが海外から従業員を大量に採用し、外国人住民が人口の2割以上の3千人を超える。
海を越えてヒトもカネも呼び込むニセコ地域は、繁栄を謳歌(おうか)しているように見える。
だが、まばゆい光を放てば放つほど、その影も濃くなる。
町の中心部は多くの外国人従業員が住むため住宅不足が慢性化する。1DKの家賃は一部で10万円を超え、やむを得ず30キロ近く離れた同管内岩内町などから職場に通う人も珍しくない。
人手不足も深刻だ。町社会福祉協議会は介護ヘルパー4人で訪問先の約50人を担当する。初山真一郎事務局長は「本来なら6、7人は必要だ。時給を1300円に引き上げたが、ホテルの2千円超の清掃職に人材を取られてしまう」とこぼす。
住民が生活しづらくなった面は否めない。日本語学習などを通じて外国人との交流を図る取り組みもあるが、共生はまだ途上だ。海外の富裕層が楽しむリゾートは「こちらと違う別の国だから」と話す町民もいる。
分断とも言える状況を乗り越えるには、観光がもたらす果実を多くの住民が実感し、住みやすくなったと思える地域にすることが欠かせない。
年800万人の観光客が訪れる小樽市では、訪日客のマナー違反や路線バス混雑などで市民の視線が厳しくなりつつある。
市は昨年11月、経済効果など観光の重要性を知ってもらうパンフレットを初めて作製し、市民に4万部配った。丸田健太郎観光振興室長は「住民の理解を得られなければ、持続可能な観光業にはならない」と強調する。その模索は続いている。
■格差是正の対策急務
道内全域に目を転じれば、地域間格差の拡大が顕著である。
ラピダスの進出で、千歳市は事務所や住宅の需要が高まる。昨年の基準地価では商業地の上昇率で全国トップ3を独占し、住宅地も2、3位を占めた。
一方、商業地の下落率は全国1位にオホーツク管内滝上町、3位に同管内雄武町と宗谷管内幌延町が入るなど、過疎化が進む道内の自治体が軒並み上位を占めた。JRやバス路線の廃止で公共交通を維持できなくなる地域も広がっている。
活況と地盤沈下。二極化が加速する。そして道内の総人口は住民基本台帳上で1957年以来初めて500万人を切った。
高市早苗首相の所信表明演説では地方創生の言葉が消え、活性化の具体策は乏しい。国と道はこうしたひずみに向き合い、是正策を講じる必要がある。
■人とつながる日常を
住民の幸福感は観光地や企業の進出がなければ、実感しにくいのだろうか。
賃貸住宅大手の大東建託(東京)が行う住民評価による「街の幸福度ランキング」で、上川管内東神楽町は5年連続で道内自治体のトップだ。
旭川市に隣接する利点はあるものの、農業以外には特に目立った産業は見当たらない。
人口は計画的な宅地開発や子育て政策で16年に1万400人まで増えた。その後減少に転じたが9600人台を維持する。15歳未満の割合は20年の国勢調査で15%を超え、全道1位だ。
東京出身で移住3年目の飲食業、関矢拓人(たくと)さん(34)は4歳の子供がいる。外に出るとまちの人がいつも声をかけてきて、地域全体で子育てをしてくれる感じがするという。また「住民自らが楽しみを見つけていることに新鮮な驚きがある」と話す。
町内七つの地域にある公民館を拠点にリンゴ狩りやたき火講習会など、住民が毎月のように行事を展開する。山本進町長は「町民がまちづくりに積極的に参加していることが幸福感につながっている」と語った。
巨額投資による集客施設建設や大規模イベントをテコにして経済を発展させるのも一つの方法だろう。だが失敗や一過性に終わるリスクも背中合わせだ。
ささやかながらも人とのつながりを感じさせてくれる日常が幸福感につながる。まちづくりを考える際に忘れてはならない視点ではないか。
AIおすすめ記事
タグを押して関連記事一覧へ
トップニュース
春を迎えた小樽市内で、新小学1年生が元気に登校する。小さな体で背負うのはランドセルではなく、大半...
注目の深掘り記事











