核兵器廃絶を目指す科学者らの国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会が広島で開かれ、対話による解決を訴える「広島宣言」を採択した。原爆投下から80年の節目に被爆地から発信されたメッセージを重く受け止めなければならない。
宣言は核兵器による核抑止策は真の安全保障を提供しないとし、核兵器への依存をやめることは道義的義務だと訴えた。核保有国は核戦争に勝者はいないことを肝に銘じるべきである。
トランプ米大統領が世界大会直前に核実験再開方針を示し、ロシアによる核の威嚇が二度と核兵器を使用しないという「核のタブー」を大きく揺るがしている。
かつてない核の脅威にさらされる人類は存亡の分岐点に立っていると言わざるを得ない。
核兵器の増強や武力の行使は緊張を高め、対立や分断を深めるだけだ。求められているのは多国間主義と法の支配による秩序の回復である。交渉による削減・廃棄こそが核の脅威から逃れる唯一の道である。
核抑止論を肯定する日本は高市早苗首相が非核三原則堅持の明言を避けるなど、唯一の戦争被爆国の責務を果たしているとは言い難い。核なき世界に向けた国際的な取り組みを主導するべきだ。
科学の軍事利用の反省から1957年に発足したパグウォッシュ会議は東西冷戦下で非公式な意見交換の場として機能し、核実験禁止や軍縮など冷戦終結に大きな役割を果たした。
95年のノーベル平和賞授与は、対話によって核政策変更の実現を後押ししたことが評価されたことを忘れてはなるまい。
広島で20年ぶりに開かれた世界大会では、イスラエルとパレスチナ自治区の研究者や元閣僚らが相互理解を深める場面もあった。協議を通じた融和や合意形成の可能性は核軍縮の障壁を克服するヒントとなろう。
看過できないのは科学の独立性が侵害され、人類の幸福を追求するはずの科学者の倫理や責任が失われつつあることだ。このままでは人工知能(AI)や量子技術の軍事転用や暴走によって、広島と長崎のような惨劇を再び招きかねない。
哲学者ラッセルが提案し、アインシュタインや湯川秀樹らが署名した55年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」は「人間性をとどめよ」と記した。
非人道的兵器の開発に手を貸した自らの行為を悔いた科学者たちが、カナダの漁村パグウォッシュで設立した会議に託した願いを深く胸に刻みたい。
AIおすすめ記事
タグを押して関連記事一覧へ
トップニュース
北海道と大阪府は26日、鈴木直道知事と吉村洋文府知事(日本維新の会代表)が31日に札幌市内で行う...










