<社説>サハリン2接収 LNG調達多様化急げ

07/03 05:00

 ロシアのプーチン大統領が、極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の事業主体を、ロシア政府が新設する企業に移管させる大統領令に署名した。

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 現在の事業会社サハリンエナジーのすべての権利を新会社が引き継ぐ見通しだ。ロシア政府が事実上接収する形となる。

 サハリンエナジーには三井物産が12・5%、三菱商事が10%それぞれ出資している。液化天然ガス(LNG)生産量の約6割が日本向けで、日本のLNG輸入量の9%を占める。

 三井、三菱両社が出資を続けるにはロシア側が示す新会社への出資条件に同意する必要がある。

 大統領令は商慣行や信義則に反し、到底容認できない。日本政府は強く抗議すべきだ。

 日本の電力やガス会社はサハリンエナジーと長期購入契約を結んでいるが、今後はLNGの調達に影響する恐れがある。

 政府は調達先について、脱ロシアを念頭に、多様化を加速させていかなくてはならない。

 大統領令は、ロシアのウクライナ侵攻に対して日本が行っている制裁への報復とみられる。

 ロシア政府は、サハリン2開発に関する契約の義務違反があり、ロシアの国益や経済安全保障に対する脅威が生じたとしている。

 一方的な主張であり、ロシアは国際ビジネスでいっそう信頼を失うと言わざるを得ない。

 日本政府は今回のような事態を予想できたはずだが、権益維持を強調するばかりで代替調達先を確保する表立った動きはなかった。見通しが甘かった面は拭えまい。

 LNGは温室効果ガスの排出量が比較的少ない。脱炭素の面からも国際的な争奪戦が激化し、市場価格は高騰している。

 特にエネルギー調達の脱ロシアを進める欧州企業が権益の確保に動いている。米国の石油大手や中国も豊富な資金力を背景に交渉を活発化させている。

 調達の出遅れは国民の生活に直結する。日本は官民が連携し、新たな権益の獲得に取り組んでいくことが欠かせまい。

 日本は脱炭素に向けて電源構成のLNG比率を現在の約4割から30年度には2割に減らす方針だ。

 その方向性は維持すべきだが、再生可能エネルギーの拡充が進むまではLNGにある程度頼らざるを得ず、投資も必要となろう。

 政府は中長期の展望を改めて示し、民間が安心して投資できる環境整備を急いでほしい。

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