<社説>熱海土石流1年 行政の不作為責任重い

07/03 05:00

 27人が犠牲になり、1人が行方不明となっている静岡県熱海市の土石流の発生から1年がたった。

 雨の中、川の上流部の盛り土が崩落し被害を招いたとみられる。

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 盛り土は届け出を上回る規模で造られ崩落が危ぶまれていた。県と市の不十分な対応によって放置された人災が疑われる。

 しかし崩落の起点となった土地の現・旧所有者はいずれも責任を否定し、危険な盛り土がなぜ造成され、どういう経緯で崩落に至ったのかは十分解明されていない。

 再発防止のため県など関係機関は徹底的に真相を究明し、責任の所在を明確にすべきだ。それが被害者への最低限の責務である。

 県はこの1年、造成に関する公文書を市と共に公開したり、行政の対応や発生原因を調べる委員会を開くなどしてきた。

 一連の検証から見えるのが、土砂に産業廃棄物をまぜたり、安全対策を求めても応じなかった現・旧所有者の数々の問題行為だ。

 熱海市議会が5月に開いた調査特別委員会で旧所有者は「造成は別の業者が行った」とし、現所有者は「盛り土のことは知らなかった」と強調した。いずれの内容も別の証人は否定している。

 現・旧所有者は誠実に対応すべきだ。両者を業務上過失致死容疑などで捜査している静岡県警は甚大な被害の責任がどこにあるのかを明らかにしてほしい。

 遺族らは現・旧所有者らに損害賠償を求める訴訟も起こしており、責任追及は民事でも進む。

 看過できないのが行政側の長年の不作為だ。指導に従わない旧所有者に対し、県と市がより重い措置命令を出すと決めながら見送っていたことも明らかになった。

 旧所有者側が防災工事を始めたためだが、ほどなく工事は中断し、命令は結局出されなかった。

 不適切な造成を止める機会は他にもあったが、県と市の連携が足りず実現しなかったという。

 そうした県と市の甘い対応を、県の第三者委員会は5月に「失敗だった」と結論付けた。重く受け止める必要がある。

 盛り土の安全対策を強化した盛り土規制法が先の国会で成立した。知事や市長が指定した規制区域内での造成を許可制とし、違反の罰則を大幅に引き上げた。

 道内の自治体は体制を整え、安全最優先の対応に徹すべきだ。

 道は道内約600カ所の既存の盛り土の安全を確認済みだが、大雨の後に緩んでいないかなどを点検することも怠ってはならない。

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