<デジタル発>全国の水族館からラッコが消える 赤ちゃん誕生、霧多布に熱視線

06/24 12:04 更新

 おなかの上で貝を割る愛らしいしぐさが人気のラッコ。皆さんは全国の水族館から、ラッコが姿を消しつつあるのを知っていますか。水族館でラッコを見た記憶がある人も多いと思いますが、1994年の時点で、おたる水族館(小樽市)など28施設に122頭が飼育されていた水族館のラッコは今、福岡市と三重県鳥羽市の2施設で3頭を残すだけになりました。そうした中で、北海道東部にある釧路管内浜中町の霧多布岬が注目度を高めています。かつての「ラッコブーム」はどこへ。そして今、ラッコたちに何が起きているのでしょうか。令和のラッコ事情を追いました。(厚岸支局 山村晋)

霧多布岬の海で赤ちゃんラッコを抱っこする母親=5月11日(冨山昌弘さん提供)
霧多布岬の海で赤ちゃんラッコを抱っこする母親=5月11日(冨山昌弘さん提供)

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 5月11日午前5時ごろの霧多布岬。2017年からチシマラッコを調査するNPO「エトピリカ基金」(浜中町)の片岡義広理事長(73)は高さ約40メートルの崖の上の遊歩道から、朝日が差し込む海に目を凝らしました。目線の先にいたのは、ずんぐりした体形の雌ラッコ。午前8時半、片岡理事長は感嘆の声を上げました。「あれ?赤ちゃんが生まれてる!」

母乳を飲む赤ちゃんラッコ=5月11日(冨山昌弘さん提供)
母乳を飲む赤ちゃんラッコ=5月11日(冨山昌弘さん提供)


 今年4月ごろからおなかが目立ち始めた雌ラッコ。片岡理事長が「妊娠は確実。盛んに交尾した時期から6カ月後に当たる5月上旬にも生まれる」と毎日のように岬を歩き、待ち望んでいた瞬間でした。

 体長約1・2メートルの母親ラッコがもふもふの毛に包まれた30センチほどの赤ちゃんラッコを胸の上で抱き、口と手を使って子の毛繕いをしています。


 北太平洋に生息するラッコは、北海道東部からカムチャツカ半島、アリューシャン列島と北アメリカ沿岸に分布し、地域によって「チシマラッコ」「アラスカラッコ」「カリフォルニアラッコ」と呼ばれます。

 ただ、冷たい海に適応したラッコの毛皮は高級品とされ、18世紀後半から20世紀前半に乱獲されて生息数が激減、20世紀初めには日本本土周辺から姿を消すという悲しい歴史があります。


 いったんは姿を消した北海道近海の野生ラッコ。環境省のレッドリストで「ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い」として絶滅危惧IA類に指定されていますが、最近、個体数が増加傾向にあり、豊富なエサを求めて北方領土・歯舞群島などから生息域を広げてきています。2014年には根室市のモユルリ島の沿岸で、2018年には霧多布岬で繁殖が確認されました。


 釧路市の水産研究・教育機構水産資源研究所の服部薫・鰭脚類グループ長によると、千島列島中部ではウルップ島を中心に1970年代に数千頭規模まで回復し、沿岸に浅い海域が広がり、ラッコの生息に適した太平洋側では歯舞群島から道東にかけて分布域を広げているそうです。

 霧多布岬で見られる、こうしたラッコの出産の風景。実は、もう水族館では見ることができないのです。

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