<広尾 手作りパン ゆうゆう舎の挑戦>上 障害者が丹精、完売必至

06/16 10:37 更新
ゆうゆうベーカリーの店内で、「障害のある利用者と町民の交流が深まってほしい」と話す高橋理事長(井上浩明撮影)
ゆうゆうベーカリーの店内で、「障害のある利用者と町民の交流が深まってほしい」と話す高橋理事長(井上浩明撮影)

 食パンやあんパン、地元産の塩を使ったパンなど約40種類のパンがずらりと並んだ。8日、十勝管内広尾町の中心部にあるパン店「ゆうゆうベーカリー」。午前11時の開店から約2時間で、用意した300個はほぼ完売。毎週のように購入する鶴巻〓子さん(75)は「たくさん買って、孫などにお裾分けしています。食感が良くておいしい」と笑顔を見せた。

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■コンブの風味

 パン店は、障害のある人が通う多機能型事業所「ゆうゆう舎」が昨年5月にオープンした。人口約6300人の小さなマチで人気を集めるパンの魅力は、その手作り感だ。

 都市部で製造、販売するパンほど需要が多くないためコスト面から業務用の冷凍パン生地を使えないといい、ゆうゆう舎では利用者と職員が全て自前で作る。生地には広尾町の漁業者から譲られた根コンブを細かく切り、水に1日つけた昆布水を使う工夫も。独特のふわっとした食感や風味が生まれるという。

 パン作りのきっかけは、2010年に南十勝を代表するパン店の廃業で広尾町内の支店がなくなり、高齢者らが気楽に本格的な焼きたてのパンを購入しづらくなったことだ。利用者の就労機会確保につながるとして、13年にパンの製造販売が始まった。

■念願の街中へ

 当初、ゆうゆう舎があったのは市街地から数キロ離れた太平洋を見下ろす丘の上。パンを売る店舗はなく、町役場や町内のスーパーで対面販売していたが、週1回が限界だった。町民からは「買える機会を増やして」との要望が出ていた。

 これを受け、クリスマス時期を中心に観光客が訪れる町内の大丸山森林公園「サンタランド」近くの住宅街に事業所を新築したのに合わせ、併設のパン店を開業。営業時間も水曜から金曜の週3回、午前11時から4時間と大幅に拡大した。

 事業所の街中への移転は「地域の中で活動したい」との思いがあり、念願だった。ゆうゆう舎を運営するNPO法人「のーまひろお」の高橋和夫理事長(80)は「利用者が町民と交流し、存在を認めてもらえることのできる施設が夢だった」と話し、パンと一緒に飲み物を楽しんでもらおうと約70平方メートルの店内にカフェスペースもつくった。

 ただ、新型コロナウイルスの感染防止対策のため、カフェの営業は見送りが続く。ゆうゆう舎の小林美穂所長(54)は「カフェスペースで催し物を行うなどして、多くの町民が訪れる場所にしたい」。感染が落ち着き、ゆうゆう舎の利用者と町民との交流を深めたいと望んでいる。
(広尾支局の金谷育生が担当し、2回連載します)

※「鶴巻〓子さん」の〓はネの右に谷。

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