<社説>緊急事態条項 冷静な議論が欠かせぬ

04/17 05:00

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、衆院憲法審査会で憲法への緊急事態条項新設の是非を巡る議論が進んでいる。

 自民党は、緊急事態時に国会議員の任期延長を可能とする改憲が必要との意見が「大勢だ」と主張した。公明党や日本維新の会、国民民主党も同調する。

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 だが、緊急事態条項の主眼は、武力攻撃や大規模災害などの際に政府の権限を一時的に強化して特別な措置を講じることにある。

 それによって国民の人権が大幅に制限される状況が想定される。

 ウクライナ危機や新型コロナウイルス禍に乗じて国民の不安をあおり、性急に改憲論議を推し進めるのは筋違いだろう。

 感染症抑止や戦争回避に向け、現行の憲法の枠内でできる限りの対応を図るのが国会の役割のはずだ。冷静な議論が欠かせない。

 国会議員の任期延長については、立憲民主党が改憲は不要と反発する。共産党は緊急事態条項の議論そのものに反対している。

 緊急時に衆院議員が任期切れになっても、憲法が定める参院の緊急集会で対処できるとの見解がある。参院は3年ごとに半数が改選され、全員不在にはならない。

 自民党は議員の任期延長のほかにも、法律と同じ効力を持つ政令を政府が国会論議を経ずに制定できる仕組みや、国民の私権を制限できる規定の新設を求めた。

 ただ、政府の権限強化や人権制限に関しては立憲や共産が反対しているだけでなく、公明などにも慎重論がある。

 このため、公明や維新が賛意を示す任期延長を突破口に、緊急事態条項の議論を加速させる思惑が透けて見える。

 有事法制や災害対策基本法は政府に強い権限を認めている。新型コロナの特措法も私権制限を伴う緊急事態宣言などを定める。

 こうした枠組みを超えて政府の権限を強化する規定を憲法に設ける必然性がどこにあるのか。

 憲法が国家権力を縛る立憲主義を逸脱し、政府に強権的な振る舞いを許す結果になりかねない。

 衆院憲法審査会は立憲民主党の求めに応じ、国民投票時のCM規制などの議論に入った。

 だが、自民党が各党に示した国民投票法改正案の概略にはCM規制が含まれていない。

 資金力の豊富な政党や団体が際限なくCMを流せば、投票の公平性に疑問符がつく。改憲を急ぐより、公正な投票を確保する方策を探ることが先決である。

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