「2島返還」首相に継承圧力 安倍氏、路線の正しさ念押し

2021/12/05 13:25 更新


 ロシアとの北方領土交渉を巡り、安倍晋三元首相が岸田文雄首相に路線継承を求め、圧力を強めている。安倍氏は1956年の日ソ共同宣言を交渉の基礎に位置付け、事実上の「2島返還」路線に転換したが、首相が同宣言への言及を避け続けているからだ。安倍氏は首相との会談や講演で自らの路線の正しさを強調。党内に影響力を持つ安倍氏だけに、首相の対ロ外交姿勢への影響が注目される。

「56年宣言に戻って交渉を進める」 安倍元首相の講演(日ロ関連部分の要旨)

 「(記録を)お読みになっていると思いますが、改めて読んでください」。安倍氏は11月30日に官邸で首相と会談し、同宣言を交渉の基礎とすることに合意した2018年11月のプーチン大統領とのシンガポール会談の内容を説明。非公開のやりとりも含め、合意の重要性を訴えた。

 同宣言は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを明記する一方、国後、択捉両島には触れていない。シンガポール会談後、交渉は進展しないまま行き詰まったが、安倍氏は首相に同宣言を基礎にした交渉継続を求めた。

 安倍氏が念を押したのは、首相が安倍政権の対ロ外交を評価する一方、同宣言に言及しないことへの懸念がある。首相は安倍氏との会談翌日の1日、官邸を訪れた根室管内1市4町の首長との面会でも「シンガポール合意を含めた、今日までの両国間の諸合意に基づき、しっかりとこの問題に取り組む」と主張。同宣言には直接触れず、過去の「諸合意」の一つとの認識をにじませた。

 首相は9月の自民党総裁選の公約発表会見で、北方領土問題について「全面返還のための多角的アプローチに取り組む」と語り、「四島返還に向けて努力を続けている」と説明。安倍氏の2島返還路線についての評価も回答を避けている。

 首相は第2次安倍政権で外相を約4年7カ月務めたが、官邸主導の対ロ融和外交には当時、周囲に懸念を漏らしていた。18年のシンガポール会談は外相退任後で関わっていない。外務省内に2島返還路線への慎重論が強いことも、首相の対ロ外交姿勢に影響しているとみられる。

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