富野由悠季さん「ガンダム、全体重かけて作った」 札幌で歩みたどる企画展

2021/12/01 19:18 更新
「この40年くらいの日本のアニメ史も俯瞰(ふかん)できる企画展です」と語る富野由悠季=11月17日、札幌・道立近代美術館(中村祐子撮影)
「この40年くらいの日本のアニメ史も俯瞰(ふかん)できる企画展です」と語る富野由悠季=11月17日、札幌・道立近代美術館(中村祐子撮影)
  • 「この40年くらいの日本のアニメ史も俯瞰(ふかん)できる企画展です」と語る富野由悠季=11月17日、札幌・道立近代美術館(中村祐子撮影)
  • 大ヒットした劇場版「機動戦士ガンダム」3部作(1981~82年)のポスターや台本(小室泰規撮影)
  • 会場入り口では、富野作品のさまざまなキャラクターが出迎える(小室泰規撮影)
  • テレビシリーズ「機動戦士Zガンダム」(85~86年)のメカ、ガンダムMk―2の頭部設定。上からデザイナーの案、富野が「ガンダムは好男子!」と記した修正指示、それを反映した決定稿(小室泰規撮影)

 テレビシリーズ「機動戦士ガンダム」(1979~80年)などで知られるアニメ監督、富野由悠季(80)の歩みをたどる企画展「富野由悠季の世界 ガンダム、イデオン、そして今」(北海道新聞社など主催)が道立近代美術館で開かれている。日本アニメ界きっての巨匠が作品に注いできた情熱に触れる好機だ。

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 主人公の正義に疑問を投げかける衝撃の幕切れだった「海のトリトン」(72年)、異なる文明の衝突を通じて人間のエゴを描いた「伝説巨神イデオン」(80~81年)―。富野作品は、子供向け番組でも強いメッセージ性を打ち出し、中高生や大学生から熱狂的な支持を得て、リアル路線のアニメを確立してきた。

 企画展は「富野監督の豊かな作家性を世間にもっと広めたい」と六つの美術館の学芸員7人が立案し、2019年に福岡市美術館から始まった。当初の6会場に加え、新潟、札幌にも巡回。札幌会場は手狭なため展示物の数を減らしたが、なお2千点を超す。

 富野作品に参加したアニメーター安彦良和、湖川友謙(こがわとものり)(ともにオホーツク管内遠軽町出身)、デザイナー安田朗(釧路市出身)ら、「絵の職人」の美麗な原画も展示されているが、多くは富野によるイメージスケッチや絵コンテなどだ。スタッフにイメージを詳細に伝え、作品を緻密に作り上げてきた舞台裏が分かる。

 富野の自伝「だから僕は…」に、「鉄腕アトム」で演出デビューした1964年当時の覚え書きが載っている。「より問題意識を内在化したドラマを確立するしかない。(中略)アニメそのものが独自に所有する表現を持てるはずだと考える」。その確信は半世紀を超すキャリアに通底しており、日本をアニメ大国へと導いたと言えるだろう。(編集委員 渡部淳)

 企画展「富野由悠季の世界 ガンダム、イデオン、そして今」は来年1月23日(日)まで。1月10日(月)(祝)を除く月曜と12月29日(水)~1月3日(月)、1月11日(火)は休館。一般1500円、高大生千円、小中学生700円。未就学児無料(要保護者同伴)。

「世界観を重視。うそをついたら見放される」富野由悠季さん

 17日に行われた開幕式に出席した富野由悠季が、合同記者会見でアニメ作りの姿勢や、業界の現状などについて縦横に語った。

 僕はロボットアニメに関わりながらも、ロボットアニメを作っているつもりは毛頭なかった。公共の電波で放送する以上、スポンサーのための「おもちゃのCM」にするだけじゃだめだ、とドラマや世界観を重視しました。ガンダムという巨大兵器を出すために、それが存在する社会構造を考えた。「機動戦士ガンダム」は「人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀」というナレーションで始まる。地球圏と宇宙圏の人間の対立、資源や産業のあり方など、子供向けだからこそ、うそをついたら見放される。作者として全体重をかけて作りました。

 現実には、そのような将来の問題に向き合う政治家は一向に現れない。作品にメッセージを込めても無駄かな、といっとき諦めましたが、今回、僕が文化功労者に選ばれたのは、社会性を帯びた作品を出したことで、アニメが「発言する媒体」としての承認を得たからかな、と思います。自分だって学生時代は社会問題の意識が高くなかった。「ガンダム」を作って、将来を見据える物語を考えざるを得なくなったんです。

 いま、地球環境問題を訴える若い世代が増えています。

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