暮らしと法律

罪犯した18、19歳の処分 どう変わる? 改正少年法が来春施行

10/20 17:00

 事件を起こした18、19歳の少年の厳罰化を図る改正少年法が、今年の通常国会で成立しました。改正を巡っては、全国の弁護士会などが「教育による更生の機会が奪われる」と猛反発。来年4月に施行を控えた現在でも、全国で賛否が渦巻いています。改正によって変わる点や、今後注目すべきポイントについて、札幌弁護士会の秀嶋ゆかり弁護士に聞きました。(聞き手 角田悠馬)


少年の健全育成を目的とする少年法。来年4月に改正法の施行が予定され、18、19歳の「特定少年」の扱いが大きく変わる
少年の健全育成を目的とする少年法。来年4月に改正法の施行が予定され、18、19歳の「特定少年」の扱いが大きく変わる


――少年法とはどのような法律ですか。

 罪を犯すなどした20歳未満の少年の処分や、少年審判の手続きを定めた法律で、健全育成が目的。背景には、少年は成長途上にあるため教育によって改善する可能性が高いという考え方があります。

――少年事件の基本的な流れを教えてください。

 まずはすべての事件を家庭裁判所が担当し、家裁調査官による生育環境の調査や、少年鑑別所による心理検査を実施。その後の少年審判は立ち直りを促す観点から行われ、裁判官が少年院送致など、その少年に合った保護処分を決めます。

■逆送拡大 氏名掲載可能に

――改正で何が変わるのですか。

 18、19歳の少年は来年4月以降、民法上の成年となることを踏まえ、大人と子どもの中間的な存在として「特定少年」と位置づけられます。引き続き少年法の適用対象であることに変わりはありませんが、さまざまな局面で17歳以下の少年とは異なる扱いを受けることになります。

――具体的には。

 現行法上、わざと行った犯罪行為で被害者を死なせてしまった少年は、原則として家裁から検察官に送致され、成人と同じ刑事裁判を受けることとなります。いわゆる「逆送」ですが、この対象となる犯罪が「短期1年以上の懲役・禁錮の罪」に大きく広がります。今までは教育に重きを置く保護処分の対象だった強盗罪や強制性交等罪、非現住建造物等放火罪などを犯した少年が、原則逆送されることになります。

    
    


――そのほかに変わる点はありますか。

 現行法は、少年審判に付されたり、起訴されたりした20歳未満の少年について、氏名や住所などの情報を出版物に掲載することを禁じています。「推知報道の禁止」といって、社会的な偏見が社会復帰の妨げになることを防ぐための決まりですが、改正法はこの対象から起訴後の特定少年を除外しています。

 また、少年法は、実際に犯罪行為をしていなくても、家出を繰り返しているなど将来的に犯罪行為をするおそれがある少年を「ぐ犯少年」と位置づけ、少年審判や保護処分の対象としています。改正法は、18歳以上のぐ犯少年を審判の対象から除外しており、今後は犯罪行為をしない限り少年審判に付されることはなくなります。

■「育ち直し」奪われる危機感

――よく分かりました。ただ、今回の改正法を巡っては賛否が鋭く対立しているそうですね。先生はどのようにお考えですか。

 私は今も、今回の改正は「改悪」だと思っています。これまでに事件を通じ、たくさんの18、19歳を見てきましたが、彼らは本当に幼い。犯行動機は「お金がほしかったから」「先輩に誘われたから」など、短絡的なものが多いですし、家庭や社会に居場所を見つけられず、適切な教育を受けられなかったり、虐待の被害を受けていたりするケースも目立ちます。刑罰だけで、自分の犯した非行事実と向き合えるとは思えないのです。ぐ犯を審判の対象から除外したことも、彼らが周囲の大人や専門職による適切なケアを受ける機会を奪うものです。

 少年審判は、付き添いの弁護士や家裁調査官、裁判官がチームとなり、立ち直りに向けた環境を整備するための手続き。少年法上、刑事裁判とは異なり和やかな雰囲気で行われることとされ、裁判官は内省を促すために直接少年と対話を重ねて非行の内容や心情を聴き取るほか、ときには少年の両親に注文を付けることもあります。少年院送致となれば、教官が少年と24時間を共にし、被害者に向き合う想像力や社会復帰後に必要な思考力を育てる。今回の法改正で一部の特定少年がこのような「育ち直し」の機会を得られなくなることに、強い危機感を感じています。

――一方で、成人年齢を引き合いに「罪を犯した時だけ少年扱いするのはおかしい」との声もあります。

 そうした主張の背景には、少年法の保護処分が「甘い」という、誤った認識があるように思います。少年法は犯罪に満たない「ぐ犯」も処分対象としているほか、裁判官が立ち直りに必要だと考えれば、例え軽い罪であっても数年にわたって少年院で教育を施される可能性があります。一方、逆送されて刑事裁判を受けた場合、軽い罪であれば執行猶予判決が出て、すぐに釈放されるかもしれない。「保護」と「刑罰」という語感の違いだけで議論しては、実質を見失ってしまいます。

■実名報道 慎重に判断を

――とはいえ、改正法は成立し、施行も来年4月に迫っています。今後注目すべきポイントは何ですか。

 改正が決まった以上、特定少年の処遇や運用面で、現行法の長所を可能な限り残していかなければなりません。法務省では現在、受刑者の特性に応じた柔軟な指導を実現するため、懲役刑と禁錮刑を一元化した「新自由刑(仮称)」の導入を検討しています。若年者に対しては教育を重視した内容になるとされていますが、あくまで刑罰である以上、限界もありそうです。具体的にどのような制度設計になるのか、注視しなければなりません。

 また、推知報道に関しては、起訴された特定少年を実際に実名で報じるか否かは各メディア次第です。実名で報道されれば、少年には就職や地域生活など、あらゆる場面で支障が生じ、地元での社会復帰が一気に難しくなる。法の縛りが外れたからといって安易に実名報道に走るのではなく、各メディアは少年の受ける不利益を十分に考慮した上で、慎重に判断してほしいと思います。


 <秀嶋ゆかり(ひでしま・ゆかり)弁護士>長崎市生まれ。早稲田大法学部を卒業し、1989年に東京で弁護士登録。97年に夫の転勤に伴い札幌に移住し、中央区で事務所を設立した。子どもの人権問題のほか、セクハラや性暴力、DV、離婚などの問題に力を入れている。趣味は「野歩き山歩き」だが、コロナ禍でなかなか楽しめないのが悩み。「代わりに庭で花を育てたり、家で料理をしたりして気分転換しています」

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