連載・特集

<デジタル発>「仕事行くのが楽しみ」 急成長の焙煎工房がつくる幸せな職場

10/08 05:00

きゃろっとで働く内倉さん(中央)やスタッフたち
きゃろっとで働く内倉さん(中央)やスタッフたち

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 仕事に向かう時の気持ちを「楽しみ」と答えられる人は、どれほどいるだろうか。「きょう、仕事に行きたくないなって思ったことがない」。恵庭市のコーヒー豆販売「きゃろっと」は、求人広告にそんなスタッフの声を載せている。近年のパート募集は市内外から応募があり、倍率は10倍を優に超える。「関わる全ての人が笑顔になるコーヒー屋」を追求することで、急成長する同社の社長、内倉大輔さん(41)は言う。「徹底した効率化の結果です。でも、利益のためではなく、楽しく働くための効率化なんです」。どんな職場なのか、のぞいてみた。(門馬羊次)


 恵庭市戸磯に構える焙煎(ばいせん)工房は、ガラス張りの洗練された建築。9月中旬に訪れると、工房内にはかぐわしいコーヒーの香りが漂い、「あいみょん」の曲が流れていた。カフェに見まがうが、工業団地内にある1000平方メートルの生産拠点だ。

工業団地内にある焙煎工房
工業団地内にある焙煎工房

■声掛け合い、アプリで確認

 ここから毎月、「定期便」としてコーヒー豆を全国の顧客に発送している。焙煎機4台が稼働し、整然と並んだ大量の段ボールが配送量の多さを物語る。きゃろっとの役員と社員は、内倉さんの妻や両親ら家族中心の8人。パートスタッフは計32人の女性で10代から40代の学生や主婦。この日は、600件超の出荷があり、スタッフ20人ほどが勤務していた。

 パートスタッフが関わる作業は、豆の袋詰めから納品書を入れて段ボールに詰めるまでの3工程に分かれている。「何か持っていく物ありますか?」「ありがとー」。スタッフが頻繁に声を掛け合いながらテキパキと動く。時折、各工程に設置されたタブレット端末を確認していた。「作業の状況を共有するアプリを見ているんです」と内倉さん。3工程ごとに関わる人数や作業の進行状況をリアルタイムで表示し、手の足りない工程が生じると、スタッフが個々の判断でサポートに向かう。

アプリを確認しながら作業するスタッフたち
アプリを確認しながら作業するスタッフたち

■食事も勉強も勤務時間扱い

 2時間ほどで作業が終わりに近づくと、スタッフ数人がソファなどが置かれたコミュニティースペースに集まった。コーヒーの味見などをする勉強会。内倉さんの妹で社員の浅野小百合さん(35)が講師となり、コーヒーの魅力を学び合う。

 スタッフの1日の労働時間は4~5時間で、そのうち出荷作業は3時間ほど。残りの時間は、食事などをしながらコミュニケーションを深める「もぐもぐタイム」、勉強会や業務改善などを考えながら自由に過ごす「放課後タイム」。全て勤務時間の扱いだ。

勉強会でスタッフにコーヒーの魅力を伝える小百合さん(右)
勉強会でスタッフにコーヒーの魅力を伝える小百合さん(右)


 コミュニティースペースの2階は「キッズルーム」。スタッフの子どもたちが遊んだり、勉強をしたりする。小百合さんは「お母さんがどんな仕事をしているのか見ることができるし、子どもたちにとってお母さんが仕事に行くことが嫌な事じゃなくなるんです」と教えてくれた。

30畳の広さがあるキッズルーム
30畳の広さがあるキッズルーム


 1年前から働き始めた清水川聖位子(せいこ)さん(39)は、8歳と4歳の娘を連れて出勤することもある。学校の夏休みなどに家に子どもたちを残すことなく働け、「子どもたちも職場に来たがるんです」と笑う。「仕事でも分からないことを周囲の人がフォローしてくれて、『また聞くの?』みたいな感じには一切なりません」。勤続10年の竹生(たこう)あゆ美さん(49)も「家にいるより職場は楽しいですよ」と教えてくれた。スタッフがさまざまな工程の業務に関わるシフトを組んでいるため、子どもの発熱などで急に休まなければいけない人がいても、職場内でカバーし合えるという。

■求人に応募殺到

 採用当初の時給は800円台後半と高くはない。だが、パートの求人を出すと、応募が殺到する。2016年6月の応募者は110人(採用6人)、17年11月は100人(同3人)、20年は126人(同11人)だった。札幌など市外からの応募もある。これまで採用したパートのうち、学生の卒業や夫の転勤以外で退職した人はほとんどいないという。

幸せな職場を追求する内倉さん
幸せな職場を追求する内倉さん


 「一緒に働く人が楽しくないのは、すごく嫌なんですよね。職場は人生の多くの時間を過ごす場所。楽しいコミュニティーの方がいいじゃないですか」。内倉さんは「関わる人すべてが笑顔になる」ために、計算し尽くした仕組みを構築している。

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