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<書評>ルート66を聴く

09/05 05:00
<書評>ルート66を聴く

朝日順子著

人生が映る 米国横断の旅と音楽
評 天辰保文(音楽評論家)

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 アメリカの音楽や文化に憧れた人なら、一度は夢見たことがあるのではないだろうか。地図を手に、カーラジオから流れるロックを口ずさみ、異国の風を浴びながら車を転がす。時間に縛られず、気が向けば途中の町に立ち寄り、アメリカの広大な土地や景色、豊かな生活や文化に触れながら気ままなドライブの旅をしてみたい、と。そして、できれば、ルート66を、と。

 「爆発的に車が普及したのに伴い西をめざす人々が増え、『物』と『人』を運ぶために、アメリカを横断する道が必要となった」と著者が記すように、大陸を、それも最短ルートでほとんど横断する形で開通したのが、ルート66だ。1926年(大正15年)、シカゴからロサンゼルスまで、全長3900キロを結んだ。ナット・キング・コールの「ルート66」を含めて、アメリカの旅を題材にした音楽、映画、小説等々これを舞台にどれほどの物語が生まれたことだろう。

 殊に、アメリカの場合、旅と切り離せないのが、音楽だ。50州のうち40州を訪れ、ロックが大好きだという著者が、ルート66所縁の、それもロード・ソングと呼ばれる旅にまつわる曲を選び、そこでは何が歌われているのか、私的な思い出を絡ませながら綴(つづ)っていく。ウィリー・ネルソンの「オン・ザ・ロード・アゲイン」からボブ・シーガーの「ターン・ザ・ページ」まで。また、オクラホマのオーキーやロサンゼルスのローレル・キャニオンなど、曲が生まれた背景や環境にも触れていく。

 それらに共通して香り立つのは、旅と音楽を日常化させた人たちの人生そのものだ。悲哀や郷愁がそこから滲(にじ)みでたり、笑い声や泣き声が聞こえたり、涙や汗が見えたりもする。著者の思い出が、そこに温かい彩を添える。同じ曲でも、著者と異なる思い出を重ねてみるのも悪くない。そうやって、読者一人一人が、自分なりの物語を加えることで、どこにもない地図が描かれていくからだ。そのための余白を用意した、これは、旅へと誘う地図のようなものかもしれない、と思ったりもする。(青土社 1980円)

<略歴>
あさひ・じゅんこ 1970年生まれ。翻訳家、編集者、音楽ライター。洋楽の歌詞解説も手掛ける。著書に「ビートルズは何を歌っているのか?」など

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