文化・芸能

<書評>関係人口の社会学

07/18 05:00
<書評>関係人口の社会学

田中輝美著

地域再生の主体となり得るか解明
評 作野広和(島根大教授)

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 圧巻の一冊である。本書は、関係人口を社会学の立場から検討し、「地域再生の主体となり得るのか」について解明した大作である。多くの地域において定住人口の増加が見込めない今日、地域を支える人材として関係人口に対する期待は高い。だが、関係人口とは具体的にどのような人を指し、その存在が地域においていかなる役割を果たしているのかについて十分な検証がなされているとは言い難い。本書はこうした疑問に対して明解に回答している。

 本書の魅力は数多くあるが、ここでは以下の3点にまとめて紹介する。

 第1に、本書は専門書と位置づけながらも、一般書としての性格を有している点である。本書は、研究として厳密な手続きを踏んで執筆されている一方で、非常にわかりやすい文章表現が用いてある。著者は、本書を仕上げるために相当な労力を費やしていることは想像に難くない。

 第2に、緻密な論理構成に基づき、説得力のある論を展開している点である。本書は、3部構成となっている。第1部は現代日本が置かれている状況を過去の膨大な研究をもとに整理し、関係人口の再定義を行っている。第2部は、3地域の事例をもとに、関係人口の意義を現場において検証している。第3部は、第1部で掲げた仮説に対する検証を行っている。ここでは、たたみかけるように論を展開している。読者は、地域再生の主体として関係人口が有意義な存在であることを納得せざるを得ない。

 第3に、地域の実態や人物相互の関係性を、長期間にわたって追跡する研究手法が用いられている点である。そのため、著者が直接関わっていないと知り得ない情報が豊富に掲載されている。そして、登場する人物名が固有名詞で表記されていることも特筆すべき点である。

 本書は、著者以外には執筆することができない唯一無二の存在である。それは、著者が長年にわたり無数の人物に出会い、関係を有して得られた確信に基づいているからである。今後は、著者自身をとりまく関係人口を整理し、出版していただくことを期待したい。(大阪大学出版会 3520円)

<略歴>
たなか・てるみ 山陰中央新報社在籍時、琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海―竹島と尖閣」で新聞協会賞。フリージャーナリストを経て、島根県立大准教授

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