病気や障害のある親、祖父母らの介護を担う18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶ。
日本ではまだ社会的な認知度は低い。実際にどれくらいいるのか正確には分かっていない。
厚生労働省は教育現場に対する初の全国調査に着手し、近く結果を公表する予定という。
介護の負担が重いほど子どもたちは学業との両立に悩み、同世代の友だちから孤立するなどの問題に直面している。
子どもたちが過度の責任を負う状況を見過ごすわけにはいかない。就職、進学など人生にかかわる大切な時期ならなおさらだ。
国は調査結果から課題を把握するとともに、自治体や福祉の専門家などと連携し、早急に必要な支援につなげなければならない。
埼玉県は昨年、県内全ての高校2年生を対象に「ヤングケアラー」に関する調査を行った。その結果、25人に1人が家族の介護や世話を担った経験があると答えた。
介護の理由は「親が仕事で忙しい」、「親の病気、障害のため」が多く、学校生活への影響については「孤独を感じる」、「勉強時間が取れない」が目立った。
子どもたちの中には学校を休みがちになったり、心身共に疲弊して中退したりする例もある。
自身が介護者であることを自覚しておらず、SOSを発することができない人も少なくない。
学校が早期発見の鍵を握る。教員はスクールソーシャルワーカーなどと協力し、家族介護の状況を丁寧に把握してほしい。
子どもたちが自分の気持ちを語れる場や地域とのつながりを持てるようなサポートも欠かせない。
病気や障害のある大人が制度に基づく適切な医療や福祉サービスを受けていないことも影響している。必要なケアが受けられるよう自治体は積極的に関与すべきだ。
こうした中、空知管内栗山町は全国の市町村で初めて「ケアラー支援条例」を制定した。条例には「全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現する」と明記している。
介護を地域全体の問題として捉え、恒久的な仕組みづくりに踏みだした。ヤングケアラーを含む支援への一歩とも言えよう。
少子高齢化や晩婚化、共働き世帯の増加などで家族形態や生活様式は多様化している。
老老介護なども社会問題となっており、介護のあり方をいま一度見つめ直したい。介護する側を支える視点もまた必要だろう。