社説

高齢者虐待 重層的な防止策が必要

02/01 05:00

 介護事業所職員による高齢者への虐待に歯止めがかからない。

 厚生労働省によると、2019年度の虐待件数は644件で、13年連続で過去最多を更新した。

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 虐待防止への意識が高まり、通報が増えたのも要因と言われるが、専門家はさらに多くの虐待が隠れているとも指摘する。

 虐待の背景には介護現場の人手不足もあるとされる。現場で働く人材を増やし、介護技術の質を向上させることが肝要だ。

 国は他業種より低い給与など待遇面の改善に加え、ITの活用で日々の管理業務の効率化を図るなど、厳しい労働負荷を軽減するための支援も欠かせない。

 虐待防止に向けて、各地域では啓発活動や研修など地道な取り組みが行われてきたが、実効性が上がっているとは言えないのが現実だろう。

 虐待件数を都道府県別にみると、東京都が73件で最多。大阪府54件、神奈川県50件と続き、北海道はほぼ横ばいの20件だった。

 虐待を受けた人のうち8割が認知症を患い、症状が重い要介護3以上の高齢者が7割を超えた。

 相談・通報を受けて事実確認を行った事例のうち、事実が認められたのは3割弱にとどまった。何が虐待に該当するか、施設や利用者などへの周知徹底も大切だ。

 虐待が認められた施設・事業所の3割が、過去に指導を受けていた。従来の再発防止策に不備はないか点検が必要であろう。

 虐待の理由に感情コントロールや介護技術の未熟さなどが挙がる。現場は人手不足による重労働で職員はストレスを抱えがちだ。経験の浅い職員に現場を任せざるを得ない実情もあるという。

 だが、人間としての尊厳を傷つける虐待は許されない。

 ストレス対策に関する職員研修を充実させ、カウンセリング体制を早急に整えたい。

 一方、家族らによる虐待は1万6928件で横ばいだったが、殺人や心中で15人が亡くなった。

 家庭内の虐待は施設以上に見えにくい。閉ざされた環境の中で悩みを誰にも相談できず、虐待が起きたケースも少なくない。

 コロナ禍で介護サービスの利用を控える動きが出ており、介護での家族負担が増えることによる虐待も懸念される。

 自治体は民生委員などと協力し、虐待の早期発見に努めてほしい。相談や声かけを強化し、介護世帯が孤立しないよう重層的な支援体制を構築するべきだ。

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