卓上四季

衣替え

07/03 05:00

「源氏物語」の冒頭文に登場する「更衣(かうい)」とは、女御(にょうご)に次ぐ位のことだが、もともとは天皇の衣替えをつかさどる女官の呼び名であった。天皇の居室などに出入りができることから、后妃を指すようになった。光源氏の母、桐壺更衣を思い起こす方も多かろう▼平安時代に中国から伝わった衣替えの習わしは、四季の装束を定めた江戸時代に庶民の間にも浸透。新暦を採用した明治維新以後は、年2回の夏服、冬服として学校や職場で定着した▼寒暖に対応する習慣は、着物を有効に利用する知恵でもあった。糸をほどいて仕立て直したり、中綿を打ち直したり。着物を大切に扱う文化を象徴する▼政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議が廃止され、新たな分科会が発足する。政府との関係や法的位置づけを明確にするためという。実効性のある議論と提言を期待したい▼専門家会議を巡っては議事録の未作成が判明したが、政府は新設する分科会でも要点を記した議事概要の作成にとどめるそうだ。これでは十分な教訓を得ることは難しい。「衣替え」で問題を封印するようなことがあっては困る▼衣替えと合わせて行われる土用の虫干しは、虫やカビの発生を防ぐ。衣類や調度品を長く使うための工夫だ。会議の記録も、市民の共有財産として繰り返し活用され、歴史の検証に耐えるためには、正確で詳細な内容を備えることが肝要だろう。2020・7・3

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