卓上四季

大海の一滴

06/29 05:00

インドに「知るは一滴に過ぎず、知らぬは大海のごとし」ということわざがあるという。少しの知識をひけらかさない方がいいという戒めだ▼知識への渇望ではあるまいが、大海の中の一滴を探し出す試みに見える。インド政府が、新型コロナウイルス感染者との接触を追跡する携帯アプリの利用を、公務員や会社員に義務付ける政策を推進している▼全土封鎖の実施で経済が停滞し、失職した労働者の多くが都市部から農村へ帰郷し、感染拡大を招いた。危機感にかられての強硬手段で、アプリを利用しない従業員が解雇や逮捕の警告を受けるなど混乱気味である▼米国のMITテクノロジーレビュー誌は、世界各国の接触確認アプリを利用の自主性、データの使用目的、一定期間後のデータ消去、最小限のデータ収集、システムの透明性という五つの観点で評価した。5項目とも及第点だったのは調査した42カ国中、カナダ、イタリアなど9カ国だった▼今月、同様のアプリ提供を始めた日本はというと、水準を満たしたのは2項目のみ。政府は「プライバシーは保護されるので、安心して利用を」と訴えるものの、国際的には必ずしもレベルが高いわけではないようだ▼こうした技術に懐疑的なのが欧州。ノルウェーは接触アプリの利用終了を決めた。感染抑止が進んで、もはや必要なくなったとの判断だ。人権侵害への敏感さは注目に値する。2020・6・29

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