社説

京都アニメ放火 創作の場破壊する蛮行

07/21 05:00

 「京アニ」の愛称で親しまれるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオが放火され、多くの命が奪われた。

 ガソリンのような液体がまかれ、火が付けられたという。爆発的な火災でほとんど逃げる間もなかっただろう。

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 犠牲者の多くは創作に携わる若いスタッフたちだ。作品作りに傾けた情熱と夢を突然絶たれた無念に、胸が締め付けられる思いだ。心から冥福を祈りたい。

 事件は世界各国で速報され、各国の駐日大使から哀悼のメッセージが寄せられるなど、衝撃が広がった。人気文化の発信地を破壊する卑劣な蛮行が、奪ったものの大きさを思い知らされる。

 身柄を確保された男は、「死ね」などと叫び、恨み言を口にしていたという。現場からは包丁やハンマーも見つかった。大量の液体を運び、火を付けるという凶行に強い憎悪を感じる。

 近年、理不尽な動機で無関係の人々を殺傷する事件が後を絶たない。さまざまな角度からの問題の解明が求められる。

 1981年創業の「京アニ」は地方に拠点を置きながら、世界的な制作スタッフを育成し、多くの人気作品を生み出してきた。

 人づくりを創業精神に掲げる職場は、アニメ作りを目指す若者のあこがれでもあった。

 世代や国籍を問わず幅広い支持を集める作品を生み出してきた源は、人材にあったと言ってよい。その損失は計り知れない。

 京都府警によると、今回身柄を確保された男は、盗作されたという趣旨の供述をしているという。

 どのような動機があったにせよ、人の生命や身体、心を傷つけて良い理由にはならない。

 川崎市では5月、スクールバスを待っていた児童ら20人が殺傷された。2016年7月には、相模原市の知的障害者施設で入所者ら45人が襲われ、19人が刺殺される事件が起きた。

 命を軽視する事件の多発の背景に何があるのか。事件の全容を解明することで、社会の病巣をえぐり出し、不安の解消につなげてほしい。

 犠牲者の多くは、スタジオの3階から屋上につながる階段で見つかった。会社には以前から、殺害を予告するようなメールも届いていたという。

 事件を未然に防ぐ手だても知恵を集めなくてはならない。現場検証などを通じて、防火体制や防犯システムの改善につなげたい。

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