フォーカス

ヤジ排除、口閉ざす道警 繰り返す「確認中」、際立つ説明不足 道内弁護士団体など抗議

07/20 09:19 更新

 道警の警察官らが安倍晋三首相の街頭演説中、批判の声を上げた市民を現場から引き離すなどした問題で、道警の説明不足に批判が強まっている。「表現の自由の侵害だ」「行き過ぎた警備」との声が上がる中、道警は一連の排除行為の理由や経緯について「確認中」と繰り返す。道内の弁護士団体などは19日、道警の対応に抗議。専門家は排除行為について「公務員の職権乱用にあたる可能性もある」と指摘しており、道警の説明責任が問われている。

[PR]


 記者「今回の対応で新たに分かったことはあるか」

 道警「確認中なのでコメントできない」

 記者「確認したことを世間に説明する考えは」

 道警「確認中なのでコメントできない」

 排除行為から4日たった19日も、道警幹部は報道各社の取材に、「確認中」とのコメントを繰り返した。

 道警の警察官らによる排除行為があったのは15日夕。JR札幌駅前での首相演説中、「安倍辞めろ」「増税反対」などと声を上げた男女2人の腕や肩をつかみ、数十メートル移動させ聴衆から引き離した。女性が次の演説会場の札幌三越に向かおうとすると、警察官は「周りの人に危害を加えるかもしれない」として2時間近く遮った。三越前では、政策批判のプラカードを掲げようとした市民団体の女性3人を取り囲んで止めた。

 そもそも、演説中に大声を出した市民を警察官が引き離す根拠は何か。

 警察官職務執行法(警職法)は警察官が市民に警告し、制止することを認めている。ただし、警告は犯罪が行われようとしている場合に、制止は人の生命や身体に危険が及ぶ恐れがあり、緊急の場合に限られる。

■「制止」満たさず?

 北海学園大の神元隆賢(かんもとたかよし)教授(刑法)は「今回の男女の一連の行為は、警職法で制止する要件を満たしていないのでは」とみる。さらに「次の演説会場に向かおうとする女性を妨害し、移動を制限する行為は『逮捕・監禁』行為とも解釈でき、警察官らによる逮捕・監禁行為を罰する『特別公務員職権乱用罪』にあたる可能性もある」と指摘。プラカードを掲げるのを遮られた女性らに対しては「警告することさえ許されない」と話す。

 公職選挙法は、演説を妨害するなど「選挙の自由妨害」を禁じるが、今回、男女が声を上げても、首相は演説を中断しなかった。「演説の遂行に支障を来さない程度のヤジは許容されるべきだ」との判例もある。

 道内の弁護士でつくる自由法曹団道支部などは事態を問題視。「自由妨害に該当しないのは明白で、排除行為は法令上の根拠がない。公権力が有形力で批判を封じ込めることにつながる」として19日、道警に経過説明と再発防止を迫った。対応した道警幹部は「関係部署に責任を持って伝える」とだけ答えたという。

■「会見の予定なし」

 19日現在、道警は「記者会見の予定はない」とする。組織不祥事に詳しい同志社大の太田肇教授は「言論の自由と選挙の自由のはざまの大きな人権問題。警察組織として強大な権限が与えられている道警は、一連の対応の理由を会見で説明するべきだ」としている。(岩崎あんり、吉田隆久)

■ネット上、あふれる中傷 「大声出すとか邪魔」「不審者」

 首相の演説中に声を上げ排除された男性(31)と女性(24)の行動や道警の警察官らによる排除行為は、インターネット上などで大きな議論を呼んでいる。「(警察官の対応は)表現の自由の侵害だ」と共感するコメントの一方で、「どんどん逮捕していい」などの誹謗(ひぼう)中傷も目立つ。

 男性と女性は16日以降、ネット上にそれぞれ当日の様子を投稿。排除された後、警察官と押し問答になったことなどを詳細に書き込んだ男性の投稿には、18日までの3日間で17万回ほどの閲覧があった。「予想以上に多くの反応だった」と男性。東京都在住の男性は19日、道警の警察官らの行為が特別公務員職権乱用罪などにあたるとして、札幌地検に告発状を送付した。

 一方で、ネット上には「単純に基地外(キチガイ)は聴衆の迷惑」「普通にヤジって公共的に害」「大声出すとか邪魔」「不審者」「演説妨害は逮捕すればいいのに」などと中傷するコメントも数多くあった。

 こうした中傷について、19日に道警に抗議をした弁護士の1人で、北海道合同法律事務所(札幌)の佐藤哲之氏は「問題の本質が正しく理解されておらず、不合理なコメント」と強調。「警察によって排除行為の経緯や法的根拠が明らかにされなければ、誹謗中傷がエスカレートする可能性もある」と話した。(岩崎あんり)

ページの先頭へ戻る