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<林瑞絵の欧州だより>50歳の誕生日会盛大に オランウータンのネネット

07/19 10:36
プレゼントの山とケーキに囲まれた50歳のネネット
プレゼントの山とケーキに囲まれた50歳のネネット

 開園は1794年、学生街カルティエ・ラタンに広がるパリ植物園付属動物園は世界最古の動物園のひとつ。ここで長きに渡って市民に愛されるスターがいる。オランウータンの雌ネネットだ。先月16日には50歳の誕生日会が盛大に催された。絶滅危惧種の動物の話題を提供することで、環境問題に関心を持ってもらう意味合いも持つ。

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 ネネットは東南アジアのボルネオ島出身。捕獲時は推定年齢3歳、パリに来たのは1972年の6月16日。穏やかな性格の彼女は過去に3匹の夫を持ち、4匹の息子をもうけ、2匹の孫娘に恵まれた。夫は皆先立ち、子供のうち1匹は京大霊長類研究所へ渡った。捕獲されたオランウータンとしては現在、世界で長寿番付の15位以内に入る。

■映画の主役にも

 10年前には映画の主役になった。フランスを代表するドキュメンタリー作家ニコラ・フィリベールが彼女の名を冠した映画を撮ったのだ。映画はネネットの緩慢な動きと個性豊かな表情をつぶさに捉える。「夫を亡くして寂しいのね」「故郷が恋しそう」…。来訪客はネネットを前に妄想や想像を重ねる。気がつくと、作品はオランウータンを介した秀逸な人間観察記にもなっていた。

 誕生日会の日は、午前中から映画「ネネット」の無料上映会を開き、午後はバースデーケーキを贈った。ケーキは砂糖なしのヘルシーなイチゴケーキ。周りにプレゼントの山。ネネットは器用に包装紙を破り、中に隠された果物を次々と食べてゆく。そんな様子をフィリベール監督はビデオカメラでしっかり収める。今度は50歳のネネットが主役の映画も見られそうである。

■指や口で抽象画

 夕方には絵画アトリエも。絵を描くのはネネット自身。なんと彼女は5年前から絵をたしなむのだ。園がオランウータンに絵の具を与えたところ、彼女だけが興味を示した。今では週2回、指や口を筆にして鮮やかな色彩の抽象画を描く。飼育員は「最初は紙をすぐ破ってしまったが、今は人間が彼女の絵を欲しいことを理解し、絵を回収できる場所に置いてくれる」。

 昨年はネネットの絵を数枚オークションにかけ、計1万2千ユーロ(約146万円)で売却。収益はオランウータン舎の拡張工事費に充てる。常に話題を提供し続けるネネット。長生きの秘訣は新しいことも積極的に楽しむ好奇心なのかもしれない。(はやし・みずえ=映画ジャーナリスト)

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