社説

トランプ氏発言 憎悪と差別あおる浅慮

07/18 05:00

 人種差別をあおり社会の分断を招く言動が、またしても超大国の大統領から飛び出した。言語道断である。

 トランプ米大統領が、自身に批判的な野党・民主党の非白人女性議員に対し「米国が嫌いなら国へ帰れ」などと言い放った。

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 米下院は直ちに「人種差別だ」と非難する決議案を賛成多数で可決した。当然である。

 トランプ氏はこれまでも差別的な発言を重ねてきたが、今回はさらにエスカレートした。米国は白人の国であり、国民であっても白人でなければ国から出て行け、との主張だと受け止められている。

 当の議員だけでなく、移民や難民を含め多様な人種や民族、宗教を抱えた米国社会の根幹を否定するものと言える。

 憎悪のまん延につながるヘイトスピーチ(憎悪表現)に等しく、卑劣だ。

 トランプ氏はツイッターで「女性議員たちは世界最悪の国から来ているのに、米政府はどうすべきだなどと語っている。もともといた国に帰り、立て直してはどうか」と発信した。

 批判を受けても「米国にいるのが嫌なら、出て行けば良い」と重ねて発言した。

 トランプ氏の主張は自身に批判的な者に対し、出自の違いを理由に排除しようとするものである。許されることではない。

 標的としたのは民主党の4議員だ。3人は米国生まれで、親が黒人やパレスチナ難民、米自治領プエルトリコ系、もう1人は元ソマリア難民で米国籍を取得した。

 いずれも昨秋の中間選挙で初当選し、トランプ政権の排他的な移民政策などを批判してきた。

 来年の大統領選をにらみ、トランプ氏は支持者である保守層へのアピールに加え、穏健な民主党執行部と急進的な4議員との分裂を狙ったとみられる。

 だが民主党は結束して非難決議案を提出した。与党・共和党の一部議員も賛成したが、本来は党派を問わず賛同されてしかるべきではなかったか。

 トランプ氏が繰り返す問題発言に慣れ、見過ごすようになってはならない。

 欧州などでも難民や移民の流入制限を求める排外的な勢力が伸長している。今回の発言にメイ英首相らが即座に反発したのは、こうした動きへの懸念からだろう。

 社会の分断ではなく融和に向けた取り組みが、各国のリーダーには強く求められている。

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