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週刊コラム

野に遺賢あり

07/16 11:00

 目下、参議院選挙たけなわである。もちろん、一人でも多くの有権者に関心を持ってもらい、これからの日本の針路について考え、投票してもらいたいとおもう。

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 しかし、選挙は限られた議員の椅子をめぐる戦いであり、どうしても敵と味方の差異を誇張し、広げる作用を持つ。かりに、安倍晋三政権と与党が勝利すれば、国民の支持を得たと主張して、憲法改正のような必ずしも国民が支持しないような政策を遮二無二推進することになるかもしれない。

 選挙における戦いはそれぞれ存分に戦ってもらうとして、今の日本には対立するよりも、共有すべき政策課題が多いと思う。日頃、今の野党を応援している私でも、そんな思いを強くする。こんなことを言い出す理由について説明したい。今年の4月から半年間、神奈川県川崎市の社会教育講座で、主として定年退職したシニア層を相手に戦後日本政治を考えるセミナーを受け持っている。このような場に出てくるのは、生活の余裕があり、知的好奇心を持っている人々である。その多くは、現役時代大企業のサラリーマン、あるいはその妻として高度成長期からバブルの時代を生きてきた人々である。この人々は反体制ではく、野党の応援もしていない。

 これらの人々は、実体験に照らして、戦後日本の強みがどこにあったか知っている。最大の強みは、現場の技術者、現業職員のモラルの高さである。現場の頑張りで1970年代の2度の石油ショックを乗り越えて世界に冠たる経済大国を作り上げた。他方で、1980年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどとおだてられたバブルの時代にむちゃくちゃな投資をしてあたら大きな散財を繰り返した。会社であれ、官庁であれ、指導部の間違った方針に対して異を唱えられない大勢順応主義が日本の失敗をもたらした。

 そうであれば、戦後生まれの人々が生き抜いた40年の経験を総括し、日本の持っている強みを守り、失敗を是正するという当たり前のアプローチで政策を考え直すことが必要である。この課題については、政治的立場とは関係なく、現実と向き合わなければならない。

 成功体験の継承という面では、今の日本は成功していない。日本の強みは、現場で仕事をする人々の律義さと向上心にあった。金儲けというインセンティブで人を動かすというのは日本にはない発想である。まじめに頑張っていれば、人生困ることはないという安心を確保することこそ、政治の任務である。そのためには、地方に金を回し、地域の人材が食べることに困らない政策を持続する必要がある。また、職業高校や高等専門学校の教育が極めて重要な意味を持つ。

 同時に、強い者に対しても、間違っていることはおかしいと主張できる自由闊達な社会を創り出すことが課題である。政治において権威主義がはびこり、下の者は上の意向を忖度するという雰囲気がますます強化される時代には、イノベーションは起こらない。

 選挙の結果、さらに安倍政権が続くことになるのかもしれない。大事なことは、政治の安定ではない。政治が安定しても、社会、経済にイノベーションが起こらなければ国は沈没する。政治的安定がつが続くならば、懐を大いに広げて、日本の強み、弱みについての自由な議論をして、改革策を見つけなければならない。残り時間は多くはない。

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