卓上四季

海の日

07/15 05:00

「ともすれば君口無しになりたまふ/海な眺めそ海にとられむ」。歌人・若山牧水は初の歌集「海の声」(1908年)でこんな一首を詠んでいる▼傍らの恋人が海をじっと見つめている。無口な姿に私は落ち着かない。彼女の心が自分以外の何かに奪われている。嫉妬にも似た切ない恋心。目の前には青く澄んだ大海原が広がっていたに違いない▼そんな美しい海がプラスチックによる汚染で傷ついている。死んだクジラの胃袋を埋め尽くすプラスチックごみなど、目を背けたくなるニュースは枚挙に暇(いとま)がない▼ようやくだが、レジ袋の有料化や紙袋への変更などの対応が、世界で広がりつつある。ただ、6月末のG20大阪サミットは「2050年までに海へのプラスチックごみゼロを目指す」とうたうにとどまった。あまりの悠長さに戸惑う▼日本や米国などから資源として輸出されたプラスチックごみを中国が輸入禁止にした。受け入れ先だった東南アジア諸国も規制を強め、ごみの一部を輸出元に送還する事態が起きている。使用後の処理を考えずに作り続けてきた当然の帰結だ。原子力発電による使用済み核燃料の処理を、外国に頼ってきた構図に似ている▼きょうは海の日。漂うプラスチックごみの映像を見るたびに、元に戻すことの難しさを思う。だが、一歩ずつ前へ、早急に。そのために何ができるのか。真剣に考える一日にしたい。2019・7・15

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