卓上四季

はやぶさ2

07/13 05:00

「星の王子さま」で人気のある作家サンテグジュペリは、1920~30年代に航空郵便の飛行士として活躍した。まだ飛行機が危険な乗り物だった時代だ。その経験を結実させた「夜間飛行」は、南米の空で暴風雨に遭遇した飛行士の悪戦苦闘を描いた物語である▼交信は途切れがち。各地の空港に待機する人たちは、病気の子どもを見守るような思いで機からの応答を待つが、燃料の尽きる時間が無情に迫る▼小惑星探査機はやぶさが小惑星イトカワから地球に帰った9年前、この小説を思い出した。エンジンの燃料漏れ、通信途絶―。度重なるトラブルで帰還が危ぶまれたものの、ぎりぎりの工夫でしのいだ管制室の技術者の姿が、手探りで困難と闘う航空草創期のパイオニアたちに重なったからだ。星空を孤独に飛ぶイメージも似ている▼その後継機はやぶさ2が、小惑星りゅうぐうに2回目の着陸を果たし、地下物質の採取に成功したようだ。太陽系の起源の解明に役立つ世界初の偉業である▼満身創痍(そうい)で戻ってきた初代は愛され、複数の映画も作られた。今回の責任者を務める津田雄一氏は「きちんとできている技術はドラマにはならない」と控えめに話す▼だが、着陸1回で帰る選択肢もあったという。10万回のシミュレーションを経て、大きな賭けの2回目に挑んだ経緯は十分に劇的だ。津田氏の言葉に、技術者としての矜持(きょうじ)を感じた。2019・7・13

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