となりの野生

<観察日記>シリーズを終えて㊦ 自然写真の存在意義 (写真部 金本綾子)

07/05 05:00

豊かな北海道の森。この写真1枚にどれだけの生き物が隠れているだろうか=2019年6月、黒松内町
被写体として人気のあるエゾモモンガ。愛くるしい大きな瞳でこちらをどう見ているのだろう=2019年2月、弟子屈町
 野生動物の宝庫と言われる北海道で写真を撮る仕事に就き、たくさんの生き物を撮ってきた。

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 動物にストレスをかけているのではないか、この写真を出したら、何か悪影響があるのではないか。撮りたい、紙面で紹介したいという気持ちの半面、気になって仕方がなかった。

 北海道大学大学院環境科学院の大原尚之さん(31)が、今年6月末、道内の自然写真家に調査してまとめた論文「写真を通じた自然の理解 自然写真家の意図と準備過程に関する経験的分析(原題Understanding Nature through Photography:An Empirical Analysis of the Intents of Nature Photographers and the Preparatory Process)」を発表した。

 自然写真家について扱ったエッセーや新聞記事などの調査に加え、道内で活動する自然写真家17人に個別にインタビューして内容をまとめた。

 調査の結果、自然写真家の多くは、自然科学の知識を付け、その中で独自の視点で対象を捉え、撮影に挑んでいることが分かった。

 花鳥風月的にただ美しい写真を撮るのではなく、時間をかけた野外観察や経験をもとに、自ら考えた新しい表現を通して、被写体の本質的な素晴らしさを伝えようとしている。

 有名な撮影地に赴いて、ぱっと撮れた写真とは異なる、メッセージ性の強い「自然写真」としての存在意義を考察している。

 新聞社の報道カメラマンという立場上、一つのテーマに集中して取り組むことはできない。「働き方改革」の波に逆らってたくさんの時間を費やしたとしても、毎日フィールドと向き合うことはできない。

 新聞に載った写真を「自然写真」と言ったら、おこがましいかもしれない。それでも、多くの読者に被写体のメッセージを届けることに意義はある。そう信じて、これからも北海道の自然を発信していきたい。

 シリーズ<となりの野生 観察日記>は、今回で終了します。長い間、ご愛読ありがとうございました。

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