暮らしと法律

自転車で歩道を走っていいの? スマホを見ても大丈夫? 札幌弁護士会・坂口唯彦弁護士に聞く

06/25 15:00

 通勤通学や買い物の足として欠かせない自転車。週末に颯爽と郊外をサイクリングする愛好者も増えています。健康増進に役立ち、お財布にも環境にも優しいとあって、北海道でもブームが収まる気配はありません。その一方で、自転車による重大事故のニュースも気になります。知っておくべき自転車の交通ルールと事故の備えを、札幌弁護士会の坂口唯彦弁護士に聞きました。(聞き手・報道センター 石田悦啓)


――自転車は免許が不要なことから、交通ルールを知らずに乗っている人が多いですよね。

札幌弁護士会・坂口唯彦弁護士
札幌弁護士会・坂口唯彦弁護士
  自転車は道路交通法で「軽車両」に位置付けられ、自動車と同様に飲酒運転は禁止ですし、通行方法についても決められています。例えば、車道通行が原則で歩道通行は例外であること、自動車と同じで左側通行などです。こうした点はあまり理解されていない方が多いですし、僕自身も法律家をしていなければあまり意識しなかったかもしれません。

――自転車の歩道通行が認められる例外とはどんな場合ですか。

 歩道が道路標識などにより通行が認められている場合や、70歳以上の高齢者や13歳未満の子どもが運転している場合です。もちろん、状況に照らして、歩道を通行することが安全上やむを得ないときも例外になります。

――例外の歩道通行に、決まりはありますか。

 自転車の通行指定部分がない区間では、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりません。ただ、歩道の車道側には街路樹など障害物が多くて、実際にこれを守るのは大変かもしれませんね。徐行とはおおむね時速10キロ以下とされています。歩行者の通行を妨げることになるときは、ベルを鳴らすのではなく、自転車側が一時停止しなければなりません。

――スマホを操作しながら運転している若い人を見かけます。

 道路交通法の安全運転義務違反で、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金になる恐れがあります。自動車で禁止されていることは、自転車でもだいたいは禁止されているという考えでいいと思います。

スマートフォンを操作しながら自転車を運転する人
スマートフォンを操作しながら自転車を運転する人

――自動車を追い抜かんばかりのスピードで走る自転車を見かけることがあります。バイク(原動機付自転車)の最高速度は時速30キロと定められているのに、自転車にはないのでしょうか。

 原則は道路標識に示されている速度が制限速度になります。しかし、だからといって、60キロ制限の道路で自転車が60キロで走っていいかというと、そうではありません。自転車は走行するにあたり、安全に運転する義務があります。道路交通法70条は「車両等の運転者は、ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」としています。市街地で50キロも出したら、安全運転義務違反の可能性があります。

――自動車が絡む事故は人身であれ、物損であれ、警察への通報義務があることは広く知られていますが、自転車同士や自転車対歩行者の接触事故ではどうですか。相手がいやがっても、やはり通報すべきでしょうか。

札幌弁護士会・坂口唯彦弁護士
札幌弁護士会・坂口唯彦弁護士
 交通事故があったときは、それが自転車同士や自転車対歩行者であっても、運転者はただちに負傷者を救護して、危険を防止するなど必要な措置を講じなければいけません。さらに軽いけがであっても、警察への通報義務は自動車の事故と同じです。相手が「けがが軽いので大丈夫」というので立ち去っても、後から症状が重くなり、通報しなかったことが問題視されることになるかもしれません。警察がどう対処するかは別にして、トラブル防止のためにも、通報しておくのが無難です。

――自動車が絡む事故に比べ、自転車事故の紛争の解決で難しい点はどんなところですか。

 自転車保険に入っていない場合が多いので、損害賠償請求するにしても、相手にお金がないというのがまずあります。そもそも事故を起こしたという自覚が当事者に乏しいケースが多く、お金も払えないとなれば、話し合いはうまく進みません。また自動車の事故なら、最近はドライブレコーダーなどで証拠が残ることも多いですが、自転車事故は、警察が捜査するような重大事故を除けば、相手の過失を証明するのはなかなか難しいという実態もあります。

――裁判になり、高額賠償になった事例を教えてください。

 神戸地裁は2008年、小学生男児の自転車にはねられた62歳の女性が重い後遺障害を負った事故で、男児の親に約9500万円の支払いを命じました。また東京地裁は10年、東京都内で赤信号を無視した男性の自転車が75歳の女性をはね死亡させた事故で、男性に約4700万円の賠償を命じました。基本的には賠償額の算定は自動車事故とまったく同じです。神戸の例のように、子どもや高校生が自転車を運転していて事故を起こすと、親が巨額の賠償義務を負うこともあります。

――自転車保険の加入を義務づける自治体も増えてきています。やはり加入は必須ですか。

 そう思いますが、残念ながら加入率は高くありません。火災保険や自動車保険の特約として手軽に加入できる場合もあるので、保険会社に問い合わせてみてください。

<さかぐち・ただひこ>1973年、札幌市生まれ。札幌手稲高、北大法学部卒。検察官として東京、高松で勤務した後、2000年に札幌で弁護士登録。08年に独立し、坂口法律事務所を開業した。趣味は旅行。昔ながらの日本の風景に心ひかれる。最近は広島県の尾道市に出掛けた。

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