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広がる受動喫煙対策 改正健康増進法 7月から一部施行

06/20 10:32 更新
広がる受動喫煙対策 改正健康増進法 7月から一部施行
  • 広がる受動喫煙対策 改正健康増進法 7月から一部施行
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  • 大和浩教授
  • 広がる受動喫煙対策 改正健康増進法 7月から一部施行
  • 士別市が作った受動喫煙防止条例の目的や内容を分かりやすく説明したパンフレット
  • 長瀬清・北海道医師会会長

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法の一部が7月1日に施行され、学校や病院、行政機関などの敷地内が原則禁煙になる。東京五輪・パラリンピックに向け、来年4月には改正法が全面施行となり、禁煙場所はさらに広がる。違反者には過料の罰則もあるが、喫煙所の設置を認めるなど国際的に緩い水準にとどまることから、同法よりも厳しい条例を定める自治体もある。道内では士別、美唄の両市が条例を施行。道は制定に向けた作業を進めており、受動喫煙対策が徐々に広がっている。

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■学校や病院、行政機関 敷地内が禁煙に 飲食店の対象は45%だけ、まだ甘い規制

 国際オリンピック委員会と世界保健機関(WHO)が2010年に「たばこのない五輪」で合意し、開催国に厳格な対策を求めたのを受け、改正健康増進法が昨年7月に成立した。

 来年4月の全面施行では煙の流出防止措置のある喫煙専用室を除き、ホテルや飲食店、工場などの屋内が禁煙となる。今年7月から敷地内禁煙の施設も、屋外に喫煙場所を設けることはできる。違反して改善の指導や命令に従わない施設管理者は最大50万円、喫煙者には最大30万円の過料をそれぞれ科す。

 ただ、飲食店のうち客席面積が100平方メートル以下で資本金5千万円以下の既存店は「喫煙可」などと表示すれば店内で喫煙できる。

 北京、ロンドン、リオデジャネイロなどの五輪開催都市が全面的に屋内禁煙を義務付けたのに比べると、日本の規制は甘い。WHOは医療機関や学校、飲食店など公衆が集まる8種類の場所を調べ4段階で評価。17年の報告では8種類の場所すべてで禁煙とする法律があるのは英国やカナダなど55カ国だった。法改正前の日本は禁煙義務の法律がなかったため、いずれの場所も該当せず最低ランクだった。

 法改正により医療機関と学校、大学は該当する見込みだが、飲食店や公共交通機関、国会などは「喫煙専用室」を設置できることで「禁煙」には該当しないと判断される見通しで、ランクは最低から1段階上がるだけとなりそうだ。

 飲食店は45%しか規制対象とならず、WHO神戸センターのサラ・バーバー所長は5月31日の世界禁煙デーに合わせたコメントで客や家族、従業員がたばこの煙にさらされる状況が続くとし「重要な一歩だが十分とは言えない」と指摘した。

 一方、五輪・パラリンピック開催都市の東京都は、来年4月全面施行の受動喫煙防止条例で、従業員を雇う飲食店を規模にかかわらず原則禁煙とする。これにより都内の飲食店の84%が規制の対象になる。改正法が認める屋外の喫煙所は、幼稚園や保育所、小中高校については認めない。国の規制よりも厳しくする理由について、都の担当者は「五輪のホストシティーという背景はあるが、飲食店の従業員や子どもを守る必要があるため」と強調する。

 今年4月に条例を施行した静岡県は、学校の屋外喫煙所設置は認めず、飲食店は禁煙、分煙、喫煙を明示するよう求めている。千葉市も来年4月から、従業員のいる飲食店は規模にかかわらず喫煙専用室を設けなければ喫煙できない。違反した飲食店に対する勧告に従わない場合には5万円以下、虚偽報告や検査妨害などに対しても2万円以下の過料が科される。

■駐車場も禁止、喫煙者は不採用/自治体、企業は対策強化 産業医科大・大和浩教授

 受動喫煙対策の動きについて、産業医科大(北九州市)の大和浩教授に聞いた。

 改正健康増進法により飲食店は屋内禁煙を求められますが、100平方メートル以下の既存店は「喫煙可」を選択できる。また国会に喫煙室を設置できるなど、国際レベルに達しない部分が残りました。法律を作る国会議員に喫煙者が多いことが影響しているのでしょう。

 一方で、国の規制レベルは不十分だとして、自治体や民間企業では法律よりも対策を強化する動きが着実に広がっています。例えば、滋賀県庁はたばこを吸わない職員や来庁者の受動喫煙を防ぐため屋外喫煙コーナーを閉鎖し、駐車場を含む敷地内を全面禁煙にしました。

 「喫煙者は採用しない」とはっきり打ち出している企業もあります。たばこを吸うために離席するので作業効率が落ち、無駄な喫煙場所を設けることにもなる。喫煙者は休憩時間が長くなり、吸わない人から見ると不公平という理由です。

 喫煙専用室を設ければ問題ないというのは誤りです。人が出入りすることで煙は禁煙区域や専用室外に漏れますし、そこから出てきた人は肺に残った煙を禁煙区域で吐き出します。

 世界保健機関も「喫煙室や空気清浄機では受動喫煙を防止できない」としています。さらに、喫煙者の衣服に付着したヤニからガス状物質が揮発して周囲の人に悪影響を与えます。外国では子どもが同乗する自家用車内での喫煙を禁止し、違反者には罰金を科す国・州が多くあります。東京都と兵庫県でも、罰則はありませんが、同様の条例を施行しました。

 日本でも受動喫煙対策を強化していく流れは加速していくでしょう。自治体や企業の動きに押される形で、国も動かざるを得なくなるのではないでしょうか。

<略歴>やまと・ひろし 1960年生まれ。産業医大卒。受動喫煙対策と禁煙サポートについて研究。2006年から現職。

■道内でも独自に条例

■士別市 4月に施行 歩きたばこも禁止

 約1万9千人が暮らす士別市は4月1日、受動喫煙防止条例を施行した。美唄市に続き道内2番目。牧野勇司市長は「たばこの害を他人に与えてはならない。市民が健康で長生きできるための健康長寿推進条例と同時に施行した」と話す。

 条例は学校や医療機関、児童福祉施設では屋外喫煙施設の設置を認めない敷地内完全禁煙とした。改正健康増進法より厳しい。

 また、子どもらの受動喫煙を防ぐため学校周辺の道路、公園など屋外での喫煙や、歩行中や自転車に乗車中の喫煙を禁じた。ただし罰則はない。適用外の飲食店などは来年4月に全面施行される改正法に委ねた。

 法改正後の条例制定について牧野市長は「住民とじかに接する市町村が国より一歩進んだ地域に合った対策を進めるには条例が一番よいと考えた」と語る。

 下校途中の男児(11)は道でたばこを吸っている人がいて嫌な思いをしたと言い「煙を吸わせないようにしてほしい」。夫が喫煙者の女性(83)は「孫の前では吸わないように言っている。条例ができたのは良いことだと思う」と話した。

 施行から2カ月。喫緊の課題は条例の周知。市民代表による条例検討委で委員長を務めた吉田晃吉・道北クリニック院長は「条例ができたことを知らない市民がまだ多い。受動喫煙による健康被害の理解を市民に広げ、防止対策を進める必要がある」と指摘する。

■美唄市 道内初の取り組み 市民への理解拡大

 美唄市は2016年7月に道内初の受動喫煙防止条例を施行し、市民の理解と対策が進んでいる。

 市の調査では、受動喫煙を不快と感じる市民は69%から83%、公共空間での防止に賛成は81%から87%に増えた。屋内の受動喫煙防止に取り組む事業所は48%から73%と大幅に増えた。

 ただ、条例は飲食店を適用から外し、罰則はなく、健康増進法に比べ緩やかな条例だ。一方、登下校時の通学路などでも受動喫煙防止を求めるなど、特に未成年や妊産婦を守る独自色を盛り込んだ。

 市は5月、条例施行から2年間で市民の脳卒中と心筋梗塞の発症が減少し、予防効果を示す調査結果を発表した。市は改正法の全面施行を機に条例を改正することにしており、今月24日から市民代表による委員会で検討を始める。

■道 道議が異論 中断も 制定への作業開始

 道は3月、専門部会を設け、受動喫煙防止条例の具体的な検討作業を開始。4月に20団体から条例制定に対する意見を聴いた。「国の改正法を上回る規制の条例は反対」「法の不十分な部分を補う厳格な条例が必要」などの意見が出た。7月中旬までに意見をまとめ条例の骨子づくりに入る。

 条例制定の動きは17年にも一度あった。がん患者らの要望を受けた「がん対策北海道議会議員の会」(全道議で構成)が議員提案条例を目指し、原案までつくった。だが一部の道議から異論が出て作業が中断。結局、翌18年に決議となった。

 道は、決議やその後の道議会での議論、高い喫煙率などの現状を踏まえ「受動喫煙対策の強化・推進には条例が必要」と判断し条例づくりに乗りだした。6月1日には保健福祉部に「受動喫煙対策室」も設置。担当者は「早期制定を求める要望も受けている。できるだけ早く検討作業を進めたい」と話す。(東京報道 井上雄一、くらし報道部編集委員 岩本進)

■「道条例 一刻も早く」

 長瀬清・北海道医師会会長(北海道がん対策「六位一体」協議会会長)の話

 喫煙も受動喫煙も、たばこが人の健康を害することは科学的に明らか。非喫煙者の健康に悪影響を与える受動喫煙をなくすのは当たり前です。喫煙者の健康も同じく大切。健康を守るには禁煙、たばこのない社会を目指すべきです。

 受動喫煙をなくす取り組みが各地で始まっています。私たちも道や道議会に何度も条例制定を求め、喫煙率全国一で肺がんが多い北海道こそ率先して制定を、と要望してきました。

 建て替え中の道議会新庁舎内に喫煙所を設ける問題は「受動喫煙を防ぐ」と言えば聞こえはいいですが、喫煙者が他人に迷惑をかけないための施設を税金でつくるのはおかしい。

 道民の健康を守る効果がしっかりと目に見える、北海道らしい道の条例を一刻も早くつくっていただきたいと願います。

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