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#KuToo拡大 職場の靴 女性「自由に」 ヒール付き強要「パワハラ」 見直す企業も

06/18 09:39

 職場で女性がヒール付きの靴やパンプス着用を強制されることに異議を唱える「#KuToo(クートゥー)」運動が広がりを見せている。健康被害への認識が高まり、足を痛がる女性に強要することは「パワハラに当たる可能性がある」と根本匠厚生労働相が言及。国会内では緊急集会も開かれた。AIRDO(エア・ドゥ)など道内企業の中には対応を見直す動きも出始めている。

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 客室乗務員や地上スタッフにヒール高3~5センチのパンプス着用を求めてきたエア・ドゥは対応を見直す考えだ。広報は「客室乗務員には緊急時の保安要員という側面があり、地上スタッフも客を案内して駆け足になることがある」とした上で「社員の健康や働きやすさに配慮する観点からも、靴が足に合わない、長時間履くとつらいという声があれば、きめ細かく対応していきたい」と言う。

 北洋銀行広報室の担当者も「足に負担のない靴で働くことが大切。痛みを我慢して履いている職員がいるかもしれないので、気軽に相談できる環境をつくる必要がある」と話す。

 同銀行ではヒールやパンプス着用の規定はないが、外勤の営業職の女性はほぼ全員が履いているという。広報室は「着用しなければならないという空気が現場にあるのなら、改善を図りたい」とする。

 「#KuToo」は、セクハラ根絶を目指す運動「#MeToo(ミートゥー)」に靴や苦痛をかけた造語。今年1月、俳優の石川優実さんがアルバイト先の葬儀社でヒール着用を求められた経験から「女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけない風習をなくしたい」とツイッターで発信したのを機に広がった。企業への法規制を求めるインターネット署名には17日現在、2万8千人以上が賛同している。

 運動には肯定的な反応が多い一方、「自分で会社にかけ合えばいいだけ」「ハイヒールを履くのが好きなので、こういう運動はやめてほしい」など否定的な意見もあるという。石川さんは「自分が履きたい靴を自分で選べることが大事。足が痛いのに上司に言い出せない人が多くいることも知ってほしい」と訴える。

 道内には早くから改善を進めてきた企業もある。道央の観光ホテルは十数年前、女性社員の「足が痛い」との声を受けてパンプス着用義務をやめ「黒の靴ならOK」とした。社員は現在、ヒールのない革靴などを履いているが「客からの苦情はなく、むしろパンプスのコツコツ響く靴音が気になるというクレームが減った」(総支配人)という。

 一方で、見直しに慎重な企業も。女性社員にヒール着用を義務づけている道央の別のホテルは「ヒールがあると足がきれいに見える。『痛い』という声は聞かないし、ヒールを履く職場だと認識して就職していると思う」と話す。

 現在、職場でのヒールやパンプス着用の強制を規制する法令はないが、根本厚労相は5日の衆院厚労委員会で「足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合などは、パワハラに該当しうる」と答弁。企業には今後、配慮が求められそうだ。

 札幌市男女共同参画センターの菅原亜都子事業係長は「自由に靴を選べる職場ではヒールやパンプスを履く女性は少数派。空気を読み、痛みを我慢している女性が安心して声を出せるよう、企業側が環境を整えていく必要がある」と指摘する。

■海外 強制は「差別的」

 海外では、職場でのハイヒールやパンプス着用の強制を禁止する動きが広がっている。

 KuTooキャンペーン(石川優実代表)によると、英国ではハイヒール着用を定めた服装規定に従わずに帰宅を命じられた女性が署名を集め、2017年に政府が企業に就業規則の見直しを促す通達を出した。

 フィリピン政府も同年、全ての企業に対し、女性従業員へのハイヒール着用の強制を禁ずる行政命令を出した。従業員が「実用的で快適な靴」を履くことを認め、本人が望まない限りヒール高1インチ(2・54センチ)以上の靴を履かせることを禁じた。カナダの一部の州でも、職場での女性に対するハイヒール着用の強制は「差別的」などとして禁じられている。

 労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は「足への負担が大きいヒールやパンプスは男性の靴に比べて不利益性が高く、女性への義務付けは性差別に当たる可能性がある。ジェンダーハラスメント(性別に基づく職場での嫌がらせ)の一種として、国際労働機関(ILO)が近く採択する職場のハラスメント規制条約に抵触する可能性も高い」と話している。(酒谷信子)

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