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<倶知安・ニセコ 育て!幻の魚イトウ>上 「再導入」に国内初成功

06/18 05:00
人工授精のため、イトウの腹から卵をしごき出す川村洋司さん(右)
人工授精のため、イトウの腹から卵をしごき出す川村洋司さん(右)

 体長1メートルほどのイトウの腹から黄金色の小さな卵がしごき出されると、約30人の見学者が「おおー」「きれい」と歓声を上げた。

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 5月上旬に後志管内ニセコ町の人工池・有島ポンドで開かれた公開採卵会。主催した町内の有志団体「オビラメの会」は、同池で絶滅危惧種イトウを44匹飼い、人工ふ化に取り組む。1996年に発足し2003年に人工授精に成功、04年以降、尻別川に体長約5センチの稚魚8千匹を放流した。

 採卵会の1週間前、朗報が飛び込んでいた。放流したイトウの子世代(第2世代)の遡上(そじょう)と産卵を同川支流で確認。人の手を離れ自然繁殖する「再導入」に国内で初めて成功したのだ。

 放流する稚魚は識別のため泳ぎに影響のない尾の近くのヒレを切除してある。第2世代を発見した会員の藤原弘昭さん(56)は「小さいので子世代かと考え、ヒレがあるのを見て『やっぱり』と思った。会のやり方は正しかった」と喜ぶ。

■釣り人の憧れ

 イトウは体長2メートル超の記録も残る、釣り人憧れの大物だ。50年代までは東北を含む40以上の水系で確認されたが、00年代には道内のみの15水系に。護岸工事などの環境変化が主因という。尻別川でも90年代後半にほぼ絶滅。オビラメの会は00年から30年間の「尻別川イトウ復活計画」を作り、人工授精の実験を始めた。

 イトウは成熟するまでに3~10年と時間がかかる上、飼育や採卵などに高度な技術が必要で、人工繁殖が難しいとされる。

■環境整備奏功

 同会が再導入までに長年を要したのもこのためだが、道立水産ふ化場職員だった川村洋司さん(69)=同会事務局長=が、会の立ち上げから今まで一貫して技術指導してきたことが成果につながった。養殖用の人工池や遡上を助ける魚道など、町や道と連携した環境整備も奏功した。

 川村さんが20年前、尻別川の繁殖状況を調査した当時、見つかった稚魚はわずか1匹。「非常に厳しい状態だったから、これほどうまくいくとは思わなかった」とうれしそうだ。

 オビラメはイトウを指すアイヌ語で、尻別川の釣り名人が好んで使った。23年前、オビラメの減少にいち早く気付いて動きだしたのは、地元の釣り人だった。(倶知安支局の堀田昭一が担当し、3回連載します)

<ことば>イトウ サケ科で国内最大の淡水魚。成長の過程で下流域へと向かい、その後産卵のため生まれた場所に回帰する。日本では道内にのみ生息し、成魚で数千匹と推計されている。環境省のレッドリストで絶滅の恐れが2番目に高い「絶滅危惧1B類」に指定され、「幻の魚」とも呼ばれる。

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