暮らしと法律

ストーカーから身を守るには… 札幌弁護士会・佐々木将司弁護士に聞く

06/10 15:30

 つきまといや嫌がらせなどのストーカー行為に悩む人は後を絶ちません。昨年1年間の全国の相談件数は約21000件(警察庁まとめ)で、ここ数年2万件を超える状態が続いています。ストーカー被害から身を守るためには、どうしたらいいのでしょうか。ストーカー問題に詳しい札幌弁護士会の佐々木将司弁護士に聞きました。(聞き手・くらし報道部 杉本和弘)


――ひとくちにストーカー行為といっても幅広く、「こんな程度では認められないのでは」などと諦めてしまいがちな時もあります。法律的にはどういう行為が当てはまるのでしょう。

 ストーカー規制法には、次の8項目が類型として明示されています。

①つきまとい、待ち伏せ、押しかけ
②監視していることを告げる
③面会、交際の要求
④乱暴な言動
⑤無言電話、連続電話、連続ファクシミリ、連続電子メール、SNSへの連続投稿
⑥汚物や動物の死体などの送付
⑦名誉を害する事項を告げる
⑧わいせつな写真を送付したり、インターネット掲示板等に掲載したりする


などです。こうしたことを反復して行うことがストーカー行為と認定されます。さらに①~④と⑤の電子メールの送信等は、「身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」で行われた場合とされています。

――割と具体的に定められているんですね。そもそもストーカー規制法は、どのような経緯で成立したのでしょうか。

札幌弁護士会・佐々木将司弁護士
札幌弁護士会・佐々木将司弁護士
 ストーカー規制法は2000年5月に成立しました。大きなきっかけとなったのは、前年の1999年に起きた埼玉県桶川市のストーカー殺人事件です。被害者から別れ話を持ちかけられた加害者が交際を強要したり、自宅に押しかけて被害者の両親に金銭を要求したりしました。警察に相談しても、民事不介入として対応してもらえず、その後、被害者を誹謗(ひぼう)中傷するビラが配布されるなどの被害も発生しました。結果的に、被害者は殺されてしまいました。


 規制法は2013年に改正され、電子メールの連続送信を「つきまとい等」に追加、警察と保護観察所との連携も盛り込みました。この契機になったのが、2012年の神奈川県逗子市のストーカー殺人事件です。被害者に「殺す」などとメール送信した被疑者が脅迫罪で逮捕され、執行猶予付き有罪判決が出ますが、判決後に、1日1000件を超える嫌がらせメールを被害者に送信していた、ということを踏まえたのです。

 さらに、2016年の改正では、被害者が訴えなくても警察が捜査する非親告罪化やツイッター等のSNSでの連続送信、ブログ等への執拗(しつよう)なコメントの書き込み、住居等の付近をみだりにうろつくことを「つきまとい等」に追加。警告を経ずに緊急禁止命令を出せるようになったほか、事前手続きとして必要だった加害者への聴聞を事後にして、被害者の申告だけで緊急禁止命令を出せるようになりました。

 これは同年5月の東京都小金井市のストーカー殺人未遂事件の教訓に学んだものです。この事件は、芸能活動をしていた被害者が、加害者からのプレゼントを返却したため、逆上した加害者が被害者のツイッターやブログに脅迫的な書き込みし、その後、被害者のライブ会場で待ち伏せして刃物で切りつけたというものでした。

――法律の成立や改正には、これまで被害を受けた人たちの悲しい教訓が込められていて、胸が詰まります。少しでも自衛する策はありますか。

 相手方が一方的に好意を寄せてくることも多く、防止することは簡単ではありませんが、①面識がある人の場合は、拒絶の意思を明確に伝える②SNSなどに安易に個人情報や顔写真を出さないようにし、他人の反感を買わないような内容にする…ことなどが大事です。

――今、被害を受けていると感じている人はどうすればよいのでしょうか。

 そうですね。まずは、警察や弁護士、信頼できる人などに相談をして下さい。民間の駆け込みシェルターもあります。その際に、先ほどの類型に当てはまると思ったら、できるだけ具体的に回数などを記録しておいて下さい。常に最悪の事態を想定して動いたほうがいいと思います。

 相手が分かっていれば、弁護士に依頼して、弁護士から警告を出してもらうという方法もあります。住民票の閲覧制限もしてください。それでも収まらない場合は、警察への被害届や告訴状の提出などを検討したほうがいいでしょう。

 道警の110番通報システムを利用する手もあります。被害を受けている人やその親族などが、事前に携帯電話などの情報を登録していれば、何かあって通報したとき、迅速な対応を取ってもらえます。また、危険性や切迫性が認められる場合、一時避難に関する公費負担制度というのもあります。原則3泊分の素泊まり宿泊費を出してもらい、その間にシェルター利用などその後の見通しをつけてもらうものです。

――被害届や告訴状を出すには、どうすればいいのですか。

札幌弁護士会・佐々木将司弁護士
札幌弁護士会・佐々木将司弁護士
 被害届を提出するために弁護士に依頼する必要はありませんが、1人で警察に行くのが不安だとか、うまく話せないといった場合には、弁護士に付き添いを頼んだ方がいいでしょう。


 被害届を提出し、警察でストーカー規制法のつきまとい等の反復として「ストーカー行為」と判断されれば、事件化して刑事手続きに進みます。その結果ストーカー行為罪で有罪になれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

 仮に「反復」がなく、「ストーカー行為」と判断されなかったとしても、警告や禁止命令等を出してもらえる可能性があります。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。

 ただ、ストーカー規制法の適用に時間がかかるとその間に被害が拡大する可能性もあるため、住居侵入罪や信書開封罪、名誉毀損(きそん)罪等の他の罰則での対応も同時並行で検討する必要があります。

――近年はSNSなどインターネットでの被害も増えています。

 SNSへの書き込みを読んで好意を持った面識のない人が加害者の場合、その人を特定するのは難しく、被害が拡散してしまうことも多いので、やっかいですね。加害者が面識のある人だったとしても、匿名性が高いため、特定することが困難です。

 犯人特定につながる重要情報であるIPアドレスを突き止める必要がありますが、プロバイダーは簡単には発信者情報を開示しません。そこで裁判所に申し立て、裁判所が「相当」と判断すれば、プロバイダーに開示命令を下します。迅速性が求められるので、仮処分の手続きを取ることになります。本人でもできますが、裁判所に仮処分を申請するので、法律知識が必要です。

――被害を受けている人から相談を受けた時に、気を付けた方がいいことはありますか。

 例えば、恋愛感情などのもつれを原因とするストーカー事件は、徐々にエスカレートする傾向がみられます。当初、比較的軽微な被害と思っても、後に重大事件に発展することも少なくありません。中でも、被害者と加害者に面識ある場合、被害者の方から、少しでも相手を刺激しないようにと、恋愛感情があるかのような迎合的な対応をしてしまうこともあります。相談を受けた人は、「そういう対応をしたのが間違い」などと、突き放すようなことはしないで、事情をくんで接してあげてほしいと思います。

――札幌弁護士会も相談の窓口がありますね。

 札幌弁護士会では無料で電話相談と面談相談を行っています。

 電話相談は「犯罪被害者弁護ライン」(011-251-7822)で、毎週月曜日の午前10時30分から午後0時30分と、毎週水曜日の午後5時から午後7時までです。

 面談相談は札幌弁護士会法律相談センター(011-251-7730)へ電話すると、「DV・ストーカー事件」に詳しい弁護士を紹介いたします。受付時間は平日の午前10時から午後4時まで(正午~午後1時を除く)です。

<ささき・しょうじ>愛媛県新居浜市生まれ。司法修習の場所が札幌だった縁で、札幌弁護士会に登録。小・中学校はサッカー少年。札幌弁護士会でもサッカー部を創設し、弁護士会の全国大会にも出場した。数年前から「見る方に」シフトしているが、ランニングなどで日々のトレーニングは欠かさない。1日2リットルのビールも欠かさない大のビール党でもある。

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