社説

政府の景気判断 なぜ回復と言えるのか

05/25 05:01

 総体として判断を下方修正したが、景気は回復している―。つじつまの合わない表現だ。

 政府は5月の月例経済報告で、国内景気の全体像を示す総括判断を引き下げた。

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 前月に「一部に弱さもみられる」とした輸出や生産について「弱さが続いている」と変えた。

 総括判断の下方修正は2カ月ぶりだ。米中貿易摩擦の激化が日本にも悪影響を及ぼしていることを考えれば、当然のことだろう。

 一方、景気が「緩やかに回復している」との文言は維持した。

 本当にそうだろうか。国民の実感からはかけ離れている。

 参院選を控え「景気回復」の看板を下ろしたくない安倍晋三政権の狙いが透ける。客観的であるべき景気判断に政治の思惑を忍び込ませてはならない。

 政府は景気回復を宣伝するのではなく、厳しい現実を受け止め適切な対策を講じるべきだ。

 5月の月例報告で政府は輸出や生産の弱さこそ認めたが、個人消費が持ち直しているとの判断は変えていない。理由として、4月の新車販売や大型連休の旅行者数が増えていることを挙げる。

 しかし自動車販売は新車投入効果による季節的要因も大きい。旅行者増は10連休を受けた一時的なものである可能性が高い。根拠として果たして適切だろうか。

 2%を超す賃上げ率を挙げ、所得環境は良いと政府は言う。だがそれは大企業中心の数字で、国民の実質賃金は伸びていない。

 日本経済の弱さは、20日に発表された1~3月期の国内総生産(GDP)を見れば分かる。

 年率2・1%増だが、内需の弱さを反映した輸入減がGDPを計算上押し上げたにすぎない。

 内需の主役である個人消費と設備投資が2四半期ぶりに減った。経済はむしろ停滞していないか。

 先週発表された3月の景気動向指数の基調判断は「悪化を示している」へと下方修正された。

 にもかかわらず月例報告で「回復」としたのは、「総合的判断」によるのだという。問題はその判断に説得力が乏しいことだ。

 茂木敏充経済再生担当相はきのう、「内需を支えるファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はしっかりしている」と話した。

 米中摩擦は日本企業の業績を押し下げており、打撃は今後強まりかねない。10月に消費税率が上がれば消費はさらに冷え込もう。

 政府には、冷静な情勢分析と的確なかじ取りを求めたい。

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