社説

児童虐待防止 懲戒権の議論をさらに

05/24 05:05

 児童虐待防止の強化に向け、衆院で審議中の児童福祉法などの改正案は、与野党が修正に合意し、今国会で成立の見通しとなった。

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 親の体罰禁止と児童相談所の機能強化を柱とする政府案に加え、虐待した親への再発防止プログラム実施を努力義務とした。

 野党の求めた義務化には至らなかったが、子どもを家庭に返すには不可欠な施策だろう。

 一方、体罰の根拠となってきた民法の懲戒権の見直しや、中核市への児相設置の義務化など、先送りされた課題もある。

 悲劇を繰り返さないために、今回の修正合意をゴールとせず、対策の実効性を高めるため、さらに踏み込んだ議論を求めたい。

 法改正の狙いは、子どもに寄り添って制度の穴をふさぐことだ。

 「しつけ」の名を借りた虐待は後を絶たない。改正案に保護者や里親、施設職員らによる体罰禁止を明記したのは当然だ。

 だが、罰則はなく、超党派の議員連盟が削除を求めた懲戒権は、改正法施行後2年をめどに検討するとの付則にとどめた。

 しつけを暴力に頼る風潮を速やかに改めるためにも、早急に議論を始める必要がある。

 児相の機能強化では、子どもの保護と親の支援とで部署を分けるとともに、医師や保健師の配置の義務化を盛り込む。

 役割を明確にし、助言を得ることで、一時保護や親権停止を迷わず行えるようにする。とりわけ弁護士との連携強化は重要だ。

 一方、急増する虐待に、児相の施設や職員が足りない現状の改善には、不安が残る。

 中核市や東京23区への児相設置の義務化は見送られ、代わりに人口や対応件数に応じて児童福祉司の配置基準を見直す。

 理由は人材不足だが、地域に密着し、要支援家庭の情報が集まる市町村の役割は大きい。児相の開設が困難な場合でも、積極的な取り組みが求められる。

 政府は人材育成や施設整備を支援するとともに、児童福祉司の国家資格化も含め、力量向上へ環境整備を進めなければならない。

 合意項目に、親への医学的・心理的指導という加害者支援の視点が入ったことは前進と言える。

 同時に、子どもの権利擁護の観点から、第三者が親と児相の間に入り、子どもの代弁者となる制度も検討されることになった。

 「子どもの最善の利益」の実現に向け、安全の確保を最優先に、制度を練り上げるべきだ。

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