社説

外交青書 「四島帰属」なぜ消した

04/24 05:00

 「北方四島は日本に帰属するというのが日本の立場である」―。

 河野太郎外相がきのうの閣議で報告した2019年版外交青書から、昨年まで盛り込まれていたこの文言が削除された。

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 青書は日本の外交活動の概要を記録したものだ。すでにロシアとの交渉で「四島の日本帰属」を主張していないということなのか。

 河野氏は記者会見で「総合的に勘案した」と述べた。

 四島はロシアに不法占拠されたというのが歴史的事実だ。勘案する要素などない。外交青書からの削除は容認できない。

 安倍晋三首相は北方領土問題を自らの手で決着させることを急ぎ、歯舞群島と色丹島の2島返還を軸にした交渉にかじを切った。

 さらに最近は首相や政権幹部が「不法占拠」に言及しないなどロシアに対する卑屈なまでの譲歩姿勢は目に余る。

 そうした態度は足元を見られ、領土問題で成果を上げていないのは明らかだ。主張すべきは主張する外交を貫かなければならない。

 青書では従来「北方領土と平和条約締結交渉」の項目の冒頭で、四島の日本帰属を明記してきた。

 その上で、1956年の日ソ共同宣言、93年の東京宣言、2001年のイルクーツク声明など諸合意や法と正義の原則に基づき、四島の帰属問題を解決し平和条約を締結するのが基本方針と記した。

 今回、この交渉方針に関する記述も削除された。

 そこに記された三つの政治文書は、旧ソ連やロシアの歴代政権と交わした重要な合意だ。

 特に東京宣言は四島の帰属問題の存在を互いに認め「法と正義の原則」に基づく解決を確認したもので、領土交渉の基礎となろう。 河野氏は会見で「政府の法的立場に変わりはない」とも述べた。

 ならば、政府の基本方針を従来通り外交青書に明記し、日ロ交渉でも主張すればいいはずだ。

 極端に腰の引けた外交では、四島返還の実現は遠のく。

 青書では北朝鮮の核・ミサイル問題に関し、18年版に記述していた「重大かつ差し迫った脅威」などの文言を削除した。

 圧力一辺倒から転換し、対話による拉致問題の進展を図りたいという思惑もあろうが、核・ミサイルの完全廃棄を求める立場が後退したように見られはしまいか。

 外交上の複雑な問題を抱える相手国に誤ったメッセージを送ることがないよう、文書の記述には慎重を期さねばならない。

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