社説

日ロ条約交渉 無理だった「6月合意」

04/19 05:01

 ロシアとの北方領土交渉を巡る政府の見通しは甘かったと言わざるを得ない。

 政府は日ロ平和条約締結について、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせた日ロ首脳会談での大筋合意を事実上断念した。

[PR]

 ロシアが四島の合法的領有を日本に認めるよう求めるなど一方的な主張を強め、交渉が入り口で行き詰まっているためだ。

 安倍晋三首相が自らの手で決着させることを急ぎ、歯舞群島と色丹島の2島返還を軸にした交渉にかじを切った結果、ロシアに足元を見られているのが実態だろう。

 目指すものは四島返還であることを政府は再認識し、交渉を仕切り直すべきだ。

 昨年9月の極東ウラジオストクでのフォーラムで、プーチン氏は唐突に「前提条件なしで年内に平和条約を締結しよう」と提案した。

 四島の帰属問題の解決を前提とする日本の立場と相いれず、受け入れる余地はなかった。

 しかし、首相は領土問題解決への「意欲の表れ」と評価した。その後のロシアの強硬姿勢をみれば、この時点でプーチン氏の真意を見誤っていたのではないか。

 さらに首相は2カ月後の首脳会談で、平和条約締結後の歯舞、色丹両島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させることで合意した。

 宣言には国後、択捉両島の記述はない。この宣言だけを重視すれば、日本の立場を弱める恐れがあるのは明らかだった。

 その後も安倍政権はロシア側を刺激しまいと、ロシアが四島を不法占拠したことや、四島が日本固有の領土だという歴史的事実を公に言及することを避けている。

 河野太郎外相は記者会見で、領土問題の質問を繰り返し無視することもあった。一方でロシア側は自国の主張を積極的に発信した。

 主張すべきは主張する姿勢を欠いたことが、ロシアの強硬姿勢を勢いづかせたのではないか。

 元島民の間では歯舞、色丹両島が近く返還されるとの期待も広がっていたが、裏切る形となった。

 改憲や物価目標といった看板政策の達成が見通せない中、日ロ交渉を政権浮揚につなげようとする意図がなかったか。

 国民の目を遠ざけて秘密裏に交渉を進め、妥協を積み重ねた結果、目立った成果もなく行き詰まった。失地回復は容易ではなかろう。

 安倍政権にはその責任をかみしめてもらいたい。

ページの先頭へ戻る