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<訪問>「死にがいを求めて生きているの」を書いた 朝井(あさい)リョウさん

04/14 05:00
朝井(あさい)リョウ 守屋裕之撮影
朝井(あさい)リョウ 守屋裕之撮影
  • 朝井(あさい)リョウ 守屋裕之撮影
  • 中央公論新社 1728円

平成の底に流れる対立 道内舞台に描く

 直木賞を受賞した「何者」やベストセラー「桐島、部活やめるってよ」など、平成の若者が抱える葛藤を巧みな筆致で描き出してきた。「今までの小説が地区大会だとしたら今回は全国大会のような一冊」という最新作は道内が舞台。8組9人の作家が「海族と山族の対立」という共通テーマで、古代から未来までの長編を執筆する「螺旋(らせん)プロジェクト」の一環で、平成パートを受け持った。

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 物語は、札幌の病院に植物状態で入院している北大生・南水(みなみ)智也を幼なじみの堀北雄介が見舞う場面から始まる。幼少期から自己顕示欲が強く、目に見える「やりがい」を探し求める雄介と、彼を冷静に見守る智也。水と油の2人がなぜ、ずっと一緒にいるのか―。その秘密が次第に明らかになっていく。

 「秋葉原無差別殺傷事件など自滅型の犯罪は自分に近いものを感じる」という朝井さん。舞台の大半が北海道なのは、道内関連のニュースが発想のヒントになったからだ。下調べのために札幌入りして北大キャンパスを歩いた。OBにも取材し、敷地内でのジンギスカン禁止令や恵迪寮が重要な場面で登場する。

 「憧れの伊坂幸太郎さんから誘われ『やります』と言ったけれど、後から大変だと気付いた」という共通テーマ。平成はテスト結果を非公表にしたり、運動会で順位付けしないなど対立をなくそうとした時代とみるが、共通テーマの軸には「対立」があった。悩んだあげく、対立がなくなる中で自分の存在意義を示そうと空回りする人々を描くことで逆接的に対立を表現。海族と山族という伝奇的な設定も「男女関係や上司など、読者にとって合わない人を思い浮かべてもらえるよう書いた」。

 今年で30歳。平成を象徴する作家として多くのメディアに登場する。新元号はもう違和感がないという一方、「令和」への改元で新たな作家が登場してくることも心待ちにする。「自分にとって自然なことを書いてきたら、びっくりされてきた。今度はびっくりするほうに回りたい」

東京報道 大原智也

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