柔道

感性・高藤と正統・永山が火花 柔道男子60キロ級 <インサイドストーリー>

2019/04/12 09:00
リオデジャネイロ大会銅・高藤直寿(左)と世界ランキング2位・永山竜樹(右)
リオデジャネイロ大会銅・高藤直寿(左)と世界ランキング2位・永山竜樹(右)
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 2020年東京五輪・パラリンピックを目指すアスリートが鍛え、戦う軌跡には知られざる逸話がある。そんな内幕(インサイドストーリー)を描く企画を始めたい。1回目は、たった一つの代表の座をめぐり、しのぎを削る五輪柔道男子60キロ級の先輩と後輩の物語―。(須貝剛)

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 ■リオデジャネイロ大会銅・高藤直寿
  後輩に勝ち「黙らせる」

 ■世界ランキング2位・永山竜樹
  先輩抜き「代表は自分」

 すべては永山竜樹(22)=了徳寺学園職=が東海大の門をたたいて始まった。美唄市に生まれ育ち、強豪の大成中・高(愛知)に柔道留学した道産子は2015年春、3歳上の高藤直寿(25)=パーク24=の後輩になった。

 このとき高藤は4年生。20歳で世界選手権を制した天才だ。野性的な感性で相手の隙を嗅ぎわけ、名もなき技を繰り出す。柔道界の「新種」と呼ばれていた。

 ■同門

 永山にとって高藤は避けては通れない高い頂。恩師らは、その懐へ飛び込むことに反対した。「同じ大学で練習して、手の内を明かす必要はない」と。

 永山は首を振った。「強い人の近くに身を置き、正々堂々と戦って五輪に出たい」。高校王者ながら、高藤から見ればヒヨッコの覚悟は、自らが追い求める柔道の姿にも通じる。襟と袖をつかみ、最後まで一本勝ちを狙うニッポンの正統だ。

 入学してからの永山は、自由に技を掛け合う乱取りで高藤の相手をわれ先に志願した。組み合い、絞められ、投げられて強くなると信じていた。

 永山は周りが驚くほど筋力強化に没頭し、90キロ級の仲間とも組み合った。やがて、ある思いを高藤に対して抱きはじめる。「パワーと技のキレは、こっちに分があるんじゃないか」。高藤は16年春に卒業すると、その夏のリオデジャネイロ五輪で3位となるのだが、永山は「勝てる」と感じるようになった。

 ■互角

 永山の正しさはリオ五輪から4カ月後、国際大会のグランドスラム東京決勝で証明された。初出場ながら、公式戦で初顔合わせとなった高藤に一本勝ち。担ぎ技がつぶれて逃げる高藤を内股ではね上げた。17年4月の全日本選抜体重別選手権の決勝も一本勝ち。永山は言った。「東京五輪に出るのは高藤先輩じゃなくて、自分」

 敗れた高藤は冗談めかした。「(大学で)アドバイスしすぎました」。表情が明るいのは、心のどこかでライバルの台頭を望んでいたからなのかもしれない。

 リオ五輪のあと、目標を見失いかけていた。パワーに裏打ちされた永山の正統派の柔道に封じられ、高藤は目覚めた。「永山を倒さなければ東京はない。(持ち味の)感覚を大事にするだけでは勝てない」

 非力の上半身をいじめた。すると、不安を抱えていた守りで耐えられるようになり、相手を観察する余裕も生まれた。融通むげの攻めはそのまま。高藤は自らの成長を語る。「爆発力ならリオ五輪のころの自分のほうがあった。でも、最後に勝つのは、いまの自分」

 ■決戦

 「終止符を打つ」「優勝して(永山らを)黙らせたい」。8月に開幕する世界選手権(東京)の代表選考を兼ねて今月7日に行われた全日本選抜体重別選手権を前に、高藤はほえた。

 永山に連敗したあと、国際大会の直接対決で連勝していた。この大会を制して世界選手権に出場し、勝つことができれば、東京五輪代表の座はぐっと近づく。2人の頂上決戦を期待するファンも色めき立ったが、しばらくして高藤は腰痛を患い、欠場した。

 ライバルが不在のなか、永山は決勝まで3試合すべてで4分以内に相手を投げた。準決勝では肩車を決めた。

 ▽1回戦
  永山 一本背負い 青木=パーク24
 ▽準決勝
  永山 優勢 大島=旭化成 
 ▽決勝
  永山 背負い投げ 志々目=了徳寺学園職   

 「高藤先輩は意識しなかった。目の前の試合を勝つことだけ。投げて一本を狙う柔道を貫けた」。正統の輝きは増している。

 原則1枠だった世界選手権60キロ級代表には永山と高藤の2人が選ばれた。高藤は国際試合の実績を評価された。もっとも、永山も18年からは国際大会で外国人選手に23戦無敗だ。

 「60キロ級は世界のレベルが低すぎる。永山以外との対戦は徐行運転」と高藤は話す。その通りなら、2人の戦いは東京五輪の金メダルの争いでもある。

 ライバル物語はいよいよ最終章へ。その幕は夏の世界選手権で開ける。(随時、掲載します)


 柔道の東京五輪代表は男女各7階級で1人ずつ。全日本柔道連盟が国内外の大会の実績や内容で決める。複数の選手が拮抗(きっこう)する階級は、来年4月の全日本選抜体重別選手権が最終選考会となる。新種目の混合団体メンバーは個人戦代表から選ぶ。

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