週刊コラム

時を貯めた壷をこわさないで

04/13 05:05

 18歳で親元を離れた。

 そして、その倍の年月を経てこの春、父が私たち夫婦に加わった。つまり、同居であり、50、60、80代のシニア世代の協奏曲が始まった。

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 予想通りに大変だ。当然ながら、わたしは父と夫とそれぞれに共に暮らしたことがあり、少しばかりは「こうしてほしいんだな」という意志を汲み取ることができる。けれど、二人は手探りでトライアングルの生活に慣れようとしている。なんとなく新婚の夫婦に似ている。二人ともそれぞれに気を遣うけれど、よかれと思っていることが裏目に出てばかり。側で見ているとハラハラし通しだ。

 わたしは鵜飼いにならなくてはならない。そう思って調子良く立ち回ったら、よけいにおかしくなった。決して、声を荒げて言い争いをしたり、ふてくされて口をきかない。なんてことは誰もしないけれど、どっと疲れて眠りにつくという日々が続いた。

 早くも、それぞれを理解した上で協調していくということは無理だと悟った。わたしたちはもちろん、父はほんとうに長い年月をかけて、今の自分になっている。

 生活のリズムや食の好み、考え方など身体に馴染んだ習慣は深く、深く刻まれている。明るく楽しい性格の反面、あまのじゃくで、本当か嘘かわからない冗談を言う父。当人はご機嫌でもこちらは大いに混乱する。

 わたしは勝手な妄想を抱いた。「人はたくさんの壷を持っている」のだと。

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