社説

「松橋」再審判決 冤罪の要因、徹底検証を

03/29 05:05

 熊本県で男性が刺殺された松橋(まつばせ)事件の再審公判で、熊本地裁はきのう、犯人とされ服役した宮田浩喜さんに無罪判決を言い渡した。逮捕から実に34年である。

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 冤罪(えんざい)は、人権侵害の最たるもので失われた時間は取り返しがつかない。捜査機関や裁判所は真摯(しんし)に反省しなければならない。

 事件を巡っては、自白偏重の取り調べや捜査機関に不利な証拠の「隠匿」、審理のあり方など、多くの問題点が指摘されている。

 冤罪が根絶されない現実を踏まえれば、当局に改善を委ねるだけでは不十分と言えよう。

 日弁連は、第三者機関を国会に設けて徹底検証することを提言している。司法の独立は保ちつつ、こうした手だても検討すべき時期に来ているのではないか。

 併せて、過去の再審無罪事件も洗い直し、抜本的な冤罪防止策の構築を急ぐべきだ。

 地裁の無罪判決は再審開始決定の判断を踏まえ、確定判決が有罪の根拠とした自白の信用性を改めて否定し「殺害は認められない」と結論付けている。

 にもかかわらず、裁判所の責任や誤判の理由に踏み込んでいないのは疑問が残る。自白以外の証拠が乏しい事件だっただけに、早くから無実の訴えに耳を傾けていれば過ちの回避もあり得たろう。

 再審公判に臨んだ検察の姿勢にも首をかしげる。有罪立証こそしなかったが、無罪を求めることもなかった。誠実さを欠いていると言わざるを得ない。

 検察が不都合な証拠を隠していた疑いも看過できない。

 宮田さんが凶器の小刀の柄に巻き付けたという布切れのことだ。自白では「焼却した」とされていたものの、実際は捜査側が保管していた。

 自白との整合性を図るために、布切れを開示しなかったとすれば極めて悪質と言うほかない。

 裁判員裁判などでは、検察が証拠のリストを弁護側に交付する制度があるが十分ではなく、なおかつ再審請求審は対象外だ。

 証拠は決して、捜査側が自由に扱っていい専有物ではない。すべてオープンにするための法改正やルールづくりが急務である。

 裁判所が再審開始を認めても、検察の抗告でしばしば先延ばしとなる現状も放ってはおけない。

 最高裁は「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審にも適用されると判示している。早期の人権救済を最優先に、迅速化を図る必要がある。

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