社説

患者殺害再審へ 自白偏重の危険裁いた

03/24 05:00

 ずさんな捜査への警告だ。

 滋賀県の病院で2003年、人工呼吸器を外して患者を殺害したとされる事件で、最高裁が裁判のやり直しを認めた。

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 懲役12年の刑に服した元看護助手の女性は、再審公判で無罪となる公算が大きい。

 司法は、当事者の名誉回復を早期に図らなければならない。

 このところ再審開始の決定や確定が相次いでいる。

 長く批判されてきた「有罪ありき」の捜査手法が、根深く残っている証左ではないか。

 警察や検察は、冤罪(えんざい)の温床になりかねない自白偏重の捜査や恣意(しい)的な立証を猛省し、防止策の構築を急ぐべきだ。

 有罪の確定判決は患者の死因について、呼吸器が外れて酸素の供給が途絶えたことによる急性心停止と認定した。

 これに対し、最高裁が支持した大阪高裁の再審開始決定は、弁護団が新証拠として提出した医師の鑑定書などに基づき、致死性の不整脈を原因とする自然死の可能性に言及している。

 事件そのものが存在しなかった疑いを示したに等しく、逮捕や起訴自体が厳しく問われよう。

 捜査機関が有罪の決め手とした「呼吸器を外した」という元看護助手の自白に関しても、高裁は「めまぐるしく変遷し、体験に基づいていない疑いもある」と、信用性を認めていない。

 留意すべきは、元看護助手の迎合的で物事の説明が苦手な性格が、事実に反する自白の一因になったとみられる点だ。

 こうした人は、高圧的な取り調べがなくても、捜査側に都合のいい供述をしてしまう恐れがある。

 当局は、自白に過度に頼らず、客観的な証拠を積み上げる捜査に徹しなければならない。

 自白したのが任意捜査の段階だった点も看過できない。取り調べの録音・録画(可視化)を逮捕以降だけではなく任意捜査にまで広げ、併せて取り調べ時の弁護士の立ち会いを検討すべきだろう。

 元看護助手の再審請求は2度目だ。過去の公判や最初の再審請求審で、裁判所が立証の不十分さを見逃した検証も求められる。

 今回の事件を含め、再審開始決定が出ても検察が抗告し、結論までに長い年月を費やす事例は少なくない。

 関係機関は、無辜(むこ)の救済という再審制度の目的を再認識し、検察側抗告の制限を含む対応策の議論を深めてもらいたい。

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