卓上四季

時計とネズミ

03/20 05:00

たんすの裏に落ちた懐中時計がチクタクと動いている。ネズミがそれを見て笑う。「馬鹿(ばか)だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」。懐中時計は答える。「人の見ない時だけか、又(また)は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」▼夢野久作の短編小説「懐中時計」のやりとり。誰も見ていない、分からないからといって手を抜くのはズルいと指摘され、ネズミはこそこそと逃げ出す。レオパレス21による賃貸アパートの施工不良問題も、「ばれなければいい」との考えが背景にあったのか▼外部調査委員会によると、外壁や天井、仕切り壁の内部に、設計図と異なる遮音性や耐火性に劣る建材を使っていた。工期短縮や施工の効率化のためだった。天井や壁の中ならば隠し通せると思ったに違いない▼施工不良が判明した建物は、1996年から2001年にかけて造られた全国約1300棟。調査委は創業者の元社長が指示していたとする。入居者の安全・安心を軽視しているとしか言いようがない▼しかも、補修工事のため転居を求めている約7800人のうち、約5700人は今も引っ越しのめどが立たない。快適な住居を提供する企業として、無責任過ぎよう▼転居した元入居者らは「もう(レオパレスは)選ばない」とあきれていた。全国のレオパレス入居率も、下落が続く。「ズル」の代償は、大きい。2019・3・20

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