卓上四季

希望と団結

03/19 05:00

両親はパキスタンからの移民。8人きょうだいの5番目で、低所得者層向け公営住宅で暮らしながら大学に通った。弁護士などを経て国会議員、そして―▼サディク・カーン氏の略歴である。相次ぐテロで欧米の反イスラム感情が高まる中、2016年に英国・ロンドン初のイスラム教徒市長となった。「このまちが恐れよりも希望を、分断よりも団結を選択したことを誇りに思う」。当選時の演説で、カーン氏はこう呼び掛けた▼ロンドンは英国籍の白人比率が5割を切り、アジア系やアフリカ系などの市民が過半数を占める。有権者はそんな多文化社会の「包摂」を、カーン氏に期待したとも言われる▼かつての英国領だったニュージーランドも、多様性を重んじ、さまざまな人種を受け入れてきた。そんな国で起きた大規模テロ事件だ。イスラム教礼拝所で銃が乱射され、50人が犠牲になった。容疑者は白人至上主義と移民敵視の思想を持っていたとされる。残虐な蛮行で到底許される行為ではない▼日本をはじめ世界中で社会の多様化が進んでいる。ところが、人種や宗教の溝は逆に深まるばかりのように見える。大切なのはそうした溝を埋める努力を続け、憎悪を生まないようにすることだろう▼人種や宗教による差別はどんな理由であれ、認めてはならない。大切なのはカーン氏が言ったように、今こそ恐れより希望、分断より団結、だ。2019・3・19

[PR]
ページの先頭へ戻る