卓上四季

合格発表

03/17 05:00

「電車の中には出勤するサラリーマンに交じって学生の姿もたくさんあった。『私も女学生なのよ、これから学校へ行くんです。どうぞヨロシク』私はそう叫びたい思いを抑えるのがやっとだった」▼女優の高峰秀子さんは自伝に、文化学院(東京)に登校する喜びを記している。当時13歳。5歳で子役デビューしてから、養母をはじめ多くの親族を背負い、働きづめで小学校も満足に通えなかった。念願かなって入った学校だけに、弾む心が伝わってくる▼門出の季節には、いつもこの話を思い出す。あすは公立高校の合格発表。掲示板の前で友達と抱き合い、全身に喜びをみなぎらせる若者の姿はまぶしい▼一方、希望のかなわぬ人もいよう。どんな言葉をかけられても気は晴れないかもしれないが、失敗や足踏みは決して無駄ではないことを忘れないでほしい▼高峰さんの後日談は切ない。仕事は多忙を極め、結局、1年後に退学を余儀なくされる。それでも、向学心は衰えなかった。「私の周りには、善いもの、悪いもの、美しいもの、醜いもの、なにからなにまで揃(そろ)っている。そのすべてが、今日から私の教科書だ」。その言葉通りに勉強を続け、晩年は文筆家として大成した▼あすは彼岸の入りでもある。彼岸の初日が晴れると、その年は豊作に恵まれるという。今週の道内は暖かく、春めいてくるそうだ。きっと、いい日になるだろう。2019・3・17

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