卓上四季

生への意欲

03/13 05:00

京都市動物園で飼育中の国内最高齢の雄ライオン「ナイル」が、先日、25歳の誕生日を迎えた。ライオンの平均寿命は野生で10年、動物園で20年。人間なら100歳を超える長寿だ▼最近は寝ていることが多く衰えも目立つ。一部に「安楽死させるべきだ」との声もあるが、園は著しく生活の質が低下しない限り安楽死させるつもりはなく、全力で世話をしたいとする▼ライオンと人間を一緒にしては失礼かもしれない。しかし、「生」への意欲にどれほどの違いがあろう。東京都福生市の病院が腎臓病患者の人工透析治療を中止し、患者が死亡した。生前、闘病のつらさから、治療中止に同意する書類に署名していた▼一方、死の前日には透析の再開を望む発言があったとされる。その前後で、やはり透析を拒否する意向も示されたとの報道もある。死の間際の真意がどこにあったのか、誰にも分からない▼ただ治療に疲れ果てた患者に、正常な判断が可能だっただろうか。病院側は「治療を受けない権利を患者に認めるべきだ」と言う。だが、治療を続ければ延命できた可能性もあるとされる。治療中止の判断を巡り、病院は倫理委員会にも諮っていなかった▼ナイルは今も時々、大声でほえることがあるそうだ。まるで「オレは生きてるぞ」と訴えるように。亡くなった患者の本当の「声」に、病院側はどれほど真摯(しんし)に寄り添おうとしただろう。2019・3・13

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