社説

INF条約破棄 核軍拡の歯止め失うな

02/03 05:05

 トランプ米政権は中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄をロシアに通告すると発表した。

 このままでは6カ月後に、史上初の核兵器削減条約は失効する。

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 不毛な核軍拡競争に歯止めがかからなくなることを恐れる。

 米ロは核拡散防止条約(NPT)で核軍縮の義務を負っている。これに反する行動である。

 トランプ大統領は中国など全ての核保有国が参加する「新たな条約ができればより良いし、見てみたい」と述べた。

 そうであれば、米国が条約を破棄するのは浅慮と言わざるを得ない。条約の枠を広げ、中国などの参加を促していくのが筋である。条約失効までの間に再考すべきだ。

 条約は1987年、レーガン米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の間で調印した。冷戦の終結を後押しし、その後の核軍縮に道を開いた。

 トランプ政権はロシアの新型ミサイルの射程が条約違反だと主張し、それを解消しなければ条約を破棄すると迫った。なぜ条約の下で議論を尽くし、変更させようとしないのか。

 一方のロシアも、米国が欧州に配備したミサイル防衛(MD)システムが条約に違反していると反論した。双方が相手の非をあげつらうだけでは溝は埋まらない。

 違反の疑いのある兵器をともに廃棄する覚悟が必要である。

 トランプ大統領はもともと、中国がINF条約に縛られず、中距離ミサイルの開発を加速させていることに強い不満を抱いていた。

 核保有国である中国も、米ロ同様に核軍縮の義務があることを忘れてはならない。

 だが、INF条約が失効すれば、ロシアが米国への対抗措置を取るばかりか、中国なども巻き込み、軍拡競争が激しさを増すのではないか。

 米国が非核化を求める北朝鮮に対しても説得力が弱まるだろう。

 米ロ間では新戦略兵器削減条約(新START)が2021年に期限を迎える。より射程の長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する核弾頭数などを制限する条約である。

 INF条約の失効は、この延長協議にも影響を及ぼすだろう。

 唯一の戦争被爆国である日本は大国の身勝手な行動を座視していてはならない。

 政府が核保有国と非保有国の橋渡し役を自任するのであれば、今こそトランプ氏が翻意するよう働きかけを強めるべきだ。

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