社説

日欧EPA発効 戦略のない市場開放だ

02/01 05:05

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)がきょう発効する。米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)発効と併せ、日本はかつてない高水準の自由化時代を迎える。

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 日本車の輸出増加や欧州産ワインの価格低下などを通じ、企業や消費者に一定の恩恵をもたらすとしても、それらが国内の1次産業の犠牲の上で成り立つものであってはならない。

 農林水産物の82%で関税が撤廃されるにもかかわらず、国会が日欧EPA承認のために費やした審議時間は9時間にすぎなかった。

 国内対策がきちんとなされるのか、生産者から不安の声が上がるのも当然だ。政府は、発効後に生じる問題点を精査し、支援策の拡充を機動的に行う必要がある。

 今後は、チーズやワイン、パスタなど欧州産のブランド力の高い農産品の自由化が急速に進む。

 例えば、日本が29・8%の関税をかけてきたナチュラルチーズは、カマンベールなどソフト系の低関税輸入枠が設けられ、16年目には枠内の関税が撤廃される。

 国産チーズの原料用生乳のほとんどを供給する道内酪農業への打撃は計り知れない。

 先月のホクレンと乳業各社との乳価交渉では、輸入チーズの増加が見込まれるとして、加工用乳価は据え置かれた。輸入が本格化すれば、乳価が下がり、酪農家の減収を招く恐れがある。

 政府は、安い輸入品が増えても、国内農家への支援策を講じることで所得や生産量は維持される―と国会で説明してきた。

 関税収入がなくなり、国家財政のゆとりもないのに、どうやってその約束を守るのか。説得力ある道筋を示してほしい。

 日本の農水産物の輸出がEU側の安全基準によって制限され、市場開放が不均衡な点も気になる。

 牛肉は輸出できるが、豚肉や鶏肉は検疫関係の協議が折り合わず解禁のめどが立っていない。

 道産のチーズやホタテも、輸出のためには生産・加工施設すべてでEUの衛生基準を満たさねばならず、手間とコストがかかる。

 EUは、こうした厳格な出荷基準や、農家の減収を補う直接支払制度によって域内の生産者を守り、高い自給率を維持している。

 それに引き換え、安倍政権は「攻めの農業」のかけ声だけで、準備も戦略も不十分なまま市場開放を急いだ。これでは日本の未来は危うい。早急に国内の生産基盤の強化へかじを切るべきだ。

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