社説

リーマン10年 危機の再来を防ぐには

09/16 05:00

 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した世界的な金融危機、リーマン・ショックから10年がたった。

 深手を負った米国経済はその後好転し拡大が続く。自動車といった輸出型大企業が巨額赤字に沈み、多くの派遣労働者が解雇されるなど大打撃を受けた日本経済も、表向きは回復傾向にある。

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 一方で中国の過剰債務や米国発の貿易摩擦は世界に影を落とす。欧州の一部銀行の経営難やトルコなど新興国の通貨安も心配だ。

 「100年に一度」と言われた不況を再来させてはならない。各国の当局は変調に目を光らせ、危機の芽を摘んでもらいたい。

 危機を深めたのは、低所得者向けのサブプライム住宅ローン債権を組み込んだ金融商品だ。複雑な加工で「安全」を装っていたが、住宅バブル破裂で値崩れした。

 背景には米国の行き過ぎた金融資本主義がある。当局は金融機関のもうけを最優先し、金融商品の規制を緩めていた。

 危機で窮した米金融大手は、公的支援で救われた代わりに規制で縛られた。その大手が今また台頭しているのは気がかりだ。

 金融大手が暴走すれば、危機の火種となりうる。監督当局は安易にタガを緩めてはなるまい。

 見過ごせないのは、リーマン・ショック震源地の米国が再び世界経済を揺るがしていることだ。

 危機直後に金融規制強化で合意した20カ国・地域(G20)の枠組みは、米国の提案で生まれた。

 その秩序を壊しているのがトランプ政権だ。米国第一の保護主義で国際協調を乱し、国内では企業減税や金融規制緩和を進める。

 危機で激減した消費や投資、貿易を回復させようと、各国中央銀行は緩和マネーを出した。問題は、それが株や不動産に流れ込みバブルを起こしていることだ。

 さらに深刻なのは日銀の異次元金融緩和である。国債大量購入で金利は極めて低く抑えられ、不況を利下げで防ぐ余地に乏しい。

 国債購入で膨らんだ巨額財政赤字は、金利急騰(国債急落)や円暴落の危険と背中合わせだ。

 政府・日銀は、日本が次の金融危機の発火点となりかねないと自覚し、政策を修正すべきだ。

 金融危機は社会の姿も変えた。一部の人に富が集中し、危機で貧困に陥った人との格差が広がる。

 所得格差は大衆迎合主義を増幅するなど世界を不安定にしている。各国には、こうした歪(ひず)みを正す努力を求めたい。

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