社説

日ロ首脳会談 停滞する交渉 再構築を

09/12 05:00

 安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と極東ウラジオストクで会談した。

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 両首脳は、北方四島の共同経済活動で取り組む海産物養殖、温室野菜栽培、観光、風力発電、ごみリサイクルの5項目について、具体化への工程表(ロードマップ)で合意した。

 問題なのは、交渉の成果として発表しながら、実現時期のめどや手順、法的な枠組みなど重要な内容は明らかにしなかったことだ。

 交渉がどう進展したのか不明で、確たる成果とは言えない。

 北方領土問題を巡る日ロ交渉の停滞感は著しい。元島民が落胆したのも当然だ。

 共同経済活動の狙いは、互いの信頼醸成を図り、領土問題解決につなげることだ。首脳会談を22回重ねながら、四島の帰属確認の問題が進展しないのはなぜなのか。

 対ロ交渉は土台から再構築する必要があろう。

 交渉停滞の要因の一つには、共同経済活動に不可欠な「法的な枠組み」を巡る対立がある。

 事業の許可、土地の取得といった各種手続きのほか、事故や事件が起きた際の警察権などについて、日ロ双方の法的立場を害さない「特別な制度」が必要になるが、具体策はいまだまとまらない。

 渡航に際しては、ロシア側が、四島を含むサハリン州と北海道の住民を対象にした短期ビザの相互免除を提案している。

 ただ、ロシア側は四島での自国の主権を前提にしており、日本が容認できるはずがない。

 外務当局の交渉は、主権を巡る原則論の対立が続いている。やはり首脳間で平和条約締結に向けた道筋を示してもらいたい。

 これに加えて、安全保障を巡る溝が日ロ間に影を落としている。

 ロシアは日本が計画する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」に反発している。

 米国が欧州で進めてきたミサイル防衛(MD)がアジアにも拡大され、それに日本が協力しているとみているからに他ならない。

 ロシアは北方領土で軍備増強を続け、さらに、きのうから冷戦終結以降、最大規模の軍事演習「ボストーク2018」を極東などで始めた。中国も初参加し、米国をけん制する姿勢を強めている。

 北方領土問題を進展させるには、日米の安全保障協力に対するロシア側の懸念を払拭(ふっしょく)することも欠かせない。経済に偏らず、安全保障や法的な問題など多面的、重層的な交渉が求められる。

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