社説

自民党総裁選 これで論戦尽くせるか

09/11 10:00 更新

 果たして、国民に開かれた政策論戦を尽くせるのだろうか。

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 自民党総裁選は安倍晋三首相と石破茂元幹事長が立候補した。胆振東部地震への対応を優先させるため、告示からきょうまでの選挙活動は自粛している。

 党道連は7日告示、20日投開票の日程の延期を総裁選管理委員会に申し入れたが、野田毅委員長は「北海道の事情に最大限の配慮をしながら粛々と進めたい」と述べ、応じなかった。

 総裁選はもともと期間中に首相のロシア訪問が挟まれる窮屈な日程で組まれ、そこに大地震による3日間の空白が加わった形だ。

 本来なら、十分な論戦の時間を確保するとともに、道内の党員が落ち着いて訴えを聞く環境に戻るのを待つためにも、延期するのが当然ではなかったか。

 両候補はあす午前に共同記者会見などに臨むが、首相は午後から13日まで訪ロで不在となる。

 石破氏が求めたテーマ別討論会は開かれず、地方遊説も6年前の総裁選から大幅に減った。

 選挙戦を空洞化させるかのような動きに拍車を掛けているのが、議員票での圧倒的優位を背景にした首相支持陣営の言動である。

 二階俊博幹事長は先週、首相訪ロに関し記者団に「日本で(総裁選の)会合を三つやるより、海外に行って報道してもらった方がずっと広がりを見せる」と述べた。

 外交を総裁選にアピールできるとの利点を強調したとみられる。

 二階氏は党員票も首相が「圧倒的」に勝利するとの見通しも示した。総裁選への国民の関心を失わせるようなあけすけな物言いは、幹事長としていかがなものか。

 首相の合同選対本部の発足式では、各議員に署名を求めた支持の「誓約書」が首相に手渡された。

 署名は露骨な締め付けだが、総裁選後の内閣・党人事を前に冷遇を恐れる議員心理が働いたのだろう。「安倍1強」の下で物言えぬ党内の空気を象徴する光景だ。

 自民党が新聞・通信各社に「公平・公正な報道」を求めた野田委員長名の文書も見過ごせない。記事や写真の掲載面積は「必ず平等・公平に扱うよう求める」などと細かい注文を付けている。

 総裁選をどう報じるかは報道機関自身が判断すべきであり、政党の口出しは言論の自由を脅かす権力の不当な介入になりかねない。

 自身に批判的な報道に敏感な首相を忖度(そんたく)し、政権批判を強める石破氏に焦点が当たるのを避けようとする意図を疑わざるを得ない。

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