就活・就職

就活指針 混乱招く唐突な廃止論

09/05 05:05

 経団連の中西宏明会長が、大手企業の採用活動に関する指針を、2021年春に卒業する大学生の就活から廃止する意向を示した。

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 経団連は指針を見直す作業をしている。中西氏は「経団連が日程を采配することに極めて違和感がある」とも述べた。

 榊原定征前会長が一定のルールの意義を認めていただけに、唐突な方針転換と言わざるを得ない。

 企業の採用競争が激化し、指針は形骸化しつつあるが、就活時期の目安とはなっている。

 いきなり廃止とは乱暴すぎないか。学生生活に多大な影響が出る恐れもある。大学側から困惑の声が上がるのは当然だ。

 経団連は、大学や学生、中小企業も納得できるようなルールについて議論を尽くすべきだ。

 指針の見直しは、21年卒の就活が東京五輪・パラリンピックと重なり、会社説明会の会場不足が懸念されたことが発端となった。

 現行の指針は、会社説明会の解禁を3年の3月、採用面接の解禁を4年の6月としている。

 だが、ITベンチャーや外資系など、指針に縛られない企業の採用活動が先行し、経団連は昨春、会員企業の不満に応える形で1日インターンシップを解禁した。

 現在は、これを利用して、3年の夏ごろから事実上の採用活動を始める企業が多いのが実情だ。

 この上、指針を廃止すれば、現状を追認するに等しい。

 ルールがなくなれば、採用活動のさらなる前倒しや、学生の囲い込みにつながりかねない。

 大手企業の採用動向に左右される中小企業の採用は、ますます見通せなくなる。

 就活が長期化すれば、学生の研究や課外活動を圧迫する。

 経団連は6月、大学改革の提言をまとめたが、落ち着いて学べる環境づくりこそ優先して取り組まなければならない。

 就活のため上京する地方の学生の負担も重くなる。これが地方大学の学生募集に不利に働くことも懸念される。

 中西会長は指針廃止とともに、日本型の終身雇用制の行き詰まりや、これを前提とする新卒一括採用の限界にも言及した。

 通年採用に踏み切る企業も増え、採用慣行が大きく変わる可能性がある。これからの採用のあり方について、多様な観点から徹底的な検討が不可欠だ。

 変化のしわ寄せを就活生が受けないようにするためにも、ルールの再構築が求められる。

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