社説

無戸籍者の解消 子の権利守る法改正を

09/04 05:00

 無戸籍者問題に、おざなりの対応を続けることは許されまい。

[PR]

 婚姻中に女性が妊娠した子は夫の子とみなす民法の「嫡出推定」を見直すため、法務省が来月にも有識者の研究会を発足させる。

 さまざまな事情で夫の子とされるのを避けたい母親が、この規定のために出生届を出せず、子が無戸籍者となる例が少なくない。

 嫡出推定が法律上の父親を早期に確定し、子の身分の安定を図る役割を果たしてきたのは事実だが、今や父子関係を科学的に確認できる時代である。

 法務省は来年にも法制審議会に民法改正を諮問する方針だ。嫡出推定について、現代の家族と社会の実情を踏まえ、根本的な解決につながる議論をするべきだ。

 嫡出推定は離婚前に妊娠した子は夫の子、離婚後300日以内に生まれた子も前夫の子とみなす。

 このため、夫の暴力を逃れた女性が新しいパートナーの子を妊娠した場合など、無戸籍者が生まれる要因と指摘されてきた。

 無戸籍者の数は法務省が把握しているだけで700人を超え、支援団体は1万人ともみている。

 自治体の判断で住民サービスを受けられる場合もあるが、住民票や旅券を取得できず、銀行口座を開いたり部屋を借りたりするのも困難という。

 これを放置してきたことは、政府の怠慢と言わざるを得ない。

 父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えの権利を、夫や前夫にしか認めていない規定も、無戸籍状態の解消を困難にしてきた。

 この規定が、男女同権を定めた憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、神戸地裁に続いて大阪高裁は8月、「一定の合理性がある」として合憲とした。

 一方、制度について「伝統や国民感情を踏まえ立法裁量に委ねられるべきだ」とも述べている。

 政府や国会はこの指摘を重く受け止め、改善を急ぐ必要がある。

 法務省の研究会が嫡出否認の権利を「女性や子」に広げることを検討するのは当然だ。その場合の提訴期間や、子に代理人を認めるかどうかなど、論点は多い。

 家族を巡る民法規定の多くは明治時代につくられた。

 家族観や家族形態が変わる中、近年は最高裁の違憲判断が続き、遺産相続での婚外子差別や、女性だけの再婚禁止期間など、古い規定の見直しにつながった。

 不利益を被る子どもをこれ以上増やさないためにも、問題を先送りしてはならない。

ページの先頭へ戻る